空が青くて涙が出るよ

映画やミュージカルやテレビドラマの話などをします。

"Me and the Sky" - Come From Away

トニー賞のノミネーション発表、ついに今夜ですね(ですよね?)

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拝啓

トニー賞に向けて新しいミュージカルがたくさん開幕していてとってもワクワクな時期ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。私は時間とお金と心の余裕不足のため世に溢れるワクワクな情報を全然吸収しきれず逆にストレスを少しずつ溜めながら日々を過ごしています。

昨年はトニー賞で何が作品賞を受賞するかなんて誰の目にも明らかだったわけですが、今年はどうなんでしょう。目に入ってくる情報をぼんやり流し読んできた限りでは、強いのは"Dear Evan Hansen"と"Groundhog Day"とこの記事で取り上げる"Come From Away"あたりなのかなって印象を受けました。どうなんですかね。どうなんだろう。

"Dear Evan Hansen"はもう歌詞覚えるくらいアルバムを聴いてるし、"Groundhog Day"(映画「恋はデジャ・ブ」をミュージカルリメイクした作品)は一応映画を観たことあるからストーリー知ってるしでまあいいかなって感じなんですが、"Come From Away"だけは何の情報も持ってなかったのであらすじとメインとなる歌だけでも知っておこうと思ってちょっと調べてみたら見事に谷底に落とされました。ウィキペディアであらすじ読んだだけでじわっと涙出ましたし歌聴いたらもう号泣しました。軽い気持ちで調べてただけにほんとにびっくりした..….なんて素晴らしいミュージカルなんだ...…。

というわけで、今回は"Come From Away"の話。
実際に舞台を観たわけでもなく英語ネイティブでもないので間違ってる部分あるかもしれないです、ご注意ください。渡航費と英語力、ください。


おおまかなこと

"Come From Away"はワシントンD.C.トロントなどでの上演を経て2017年3月12日にニューヨーク・ブロードウェイにてオープンしました。実話を基に作られたミュージカルであり、物語の起点となるのは2001年の9月11日です。脚本に加え作詞作曲を務めたのはカナダ人夫婦のIrene SankoffとDavid Hein。

「9/11に関する実話」と聞くとどうしても少し身構えてしまうと思うんですが、この作品は鬱々とするようなものではなく、軽快な音楽にユーモアを交えながら心温まる物語を語り、地に足ついたポジティブなメッセージを与えてくれます。

こんな話

2001年9月11日。同時多発テロ攻撃を受けて米国領空は閉鎖され、飛行中の航空機は緊急着陸を余儀なくされました。そのため事件発生時大西洋横断中であった38の飛行機と約7000人の乗客はカナダのニューファンドランド(Newfoundland)島にあるガンダー(Gander)という小さな町の国際空港に急遽降り立つことになります。予期せぬ来訪者たちを迎えたことで町の人口は突然2倍近くに跳ね上がりますが、島民たちはこの世界中から来た人々(Come From Aways)を脅威とみなすのではなく快く受け入れ、とにかく手を尽くしてもてなします。彼らは学校や教会を宿泊所として提供するだけでなく自分たちの住む家にも「よそ者」たちを招き入れ、食料や衣服、生活用品、薬なども無料で差し出しました。

..….実際に起きたというこの話を知ることができただけでも私にとっては十二分に価値あるものでした。2001年の9月11日は、日常に潜む目に見えない脅威を突きつけられ、恐怖と不安、悲しみが世界を覆った日であることは間違いありません。しかし同時に、そんな状況下でありながら国籍も違う見ず知らずの他人を温かく受け入れ、自分の家や食料などを提供した人々が存在したという事実も記憶しておくべき大事なことだと思います。トランプ大統領による新政権が始まったこの時期にニューヨークで開演されることになったのは偶然らしいですが、自国の利益優先で移民や外国人を非難し排斥する風潮が世界中で広まりつつある現在だからこそ上演される意味があり、観る(または聴く)意味があるミュージカルなのではないかと思いました。

劇は休憩なしの100分構成で、出演者は12人。明確な主演は置かず、また一人一役というわけでもなく、12人の俳優はみんなほぼ舞台に出ずっぱりで、状況に合わせて演じる役を変えながら物語を進めていくそうです。こんな混乱しそうな演出をどうやって成り立たせてるのかは実際に舞台を観てみないと分からないんですが、「メンフィス(Memphis)」でスマートかつ楽しい演出を見せてくれたクリストファー・アシュリーがこのミュージカルの演出も務めているのできっと思わずため息をついてしまうような上手い方法を生み出しているんだと思います。観たい……。


"Me and the Sky" という曲

私はこの曲を一番最初に聴いて心を持っていかれました。Jenn Colellaが実在の人物Beverley Bassを演じています。NYタイムズによるとBeverleyさん本人は4月16日時点で既に61回も"Come From Away"を観ているそう。

www.youtube.com

歌詞と和訳
(自分でも「なんか違う気がする...」と思いながら無理やり訳をつけたところがあるくらい信用できない和訳なので個人で訳してお楽しみ下さい。)

BEVERLEY:
My parents must have thought they had a crazy kid
両親は変な子供を持ったと思っていたでしょうね
'Cause I was one of those kids who always knew what I wanted
私は自分の望みが何かいつでもわかってたような子だったから
They took me down to the airport to see all the planes departing
彼らは空港に私を連れて行って旅立つ飛行機を見せてくれた
Watching them fly something inside of me was starting
飛び立っていく飛行機を見て私の中の何かが動き出した
I was eight when I told them that I'd be a pilot
私は8歳で両親にパイロットになると言った

But I was too young and too short
でも私は若すぎて小さすぎた
And there were no female captains
そして女性の機長は一人もいなかった
And my dad said, "be patient" he said, "just see what happens"
父は言った  「辛抱するんだ」  彼は言った  「成り行きを見守れ」
But I took my first lesson came down from the sky
でも私は空から降ってきた最初の訓練を掴み取った
And told my father I'd fly for the rest of my life
そして父に言った  残りの人生私は飛び続けるって

And I got my first job flying for a mortician
空を飛ぶ初の仕事は葬儀屋にもらった
In a tiny bonanza, just a corpse and me
小さなボナンザの機体の中には死体と私だけ
Five dollars an hour for flying dead bodies
時給5ドルで死体を運ぶ
I had to climb over their faces just to get to my seat
自分の席に着くためだけでも彼らの顔を跨がなければいけなかった

And suddenly the wheels lift off
そして突然  車輪が浮き上がった
The ground is falling backwards
地面が後ろへ消えていく
I am suddenly alive
私は突然  生きてると感じた

Suddenly I'm in the cockpit
突然  私は操縦室にいて
Suddenly everything's changed
突然  全てが変わった
Suddenly I'm not too young or too short
突然  私は「若すぎ」でも「小さすぎ」でもなくなる
And the passengers in the back don't complain
後ろにいる乗客たちは文句を言わないしね
Suddenly I'm flying company charters
突然  私は会社のチャーター機を操縦していて
Suddenly everything's high
突然  何もかもが高みにある
Suddenly there's nothing in between me and the sky
突然  私と空を隔てるものが何もなくなる

American Airlines had the prettiest planes
アメリカン航空が一番ステキな飛行機を持っていた
So I applied as a flight engineer
だから私は航空機関士として応募した
But the World War II pilots, they all complained
でも第二次世界大戦時からのパイロットはみんな不満を漏らした
They said, "girls shouldn't be in the cockpit"
彼らは言った  「女の子は操縦室に入るべきじゃない」
"Hey lady, hey baby, hey! Why don't you grab us a drink?"
「おいレイディー、おいベイビー、おい!俺たちに飲み物でも持ってきたらどうだ?」
And the flight attendants weren't my friends back then
あの頃はフライトアテンダントたちも友達ってわけじゃなかった
And they said, "Are you better than us, do you think?"
彼女らは言った「私たちより優れてるとでも思ってるの?」

But I kept getting hired
でも私は雇われ続けて
And the World War II crew, they retired
第二次世界大戦時からのクルーは引退した
And the girls all thought much higher of me
そして女の子たちはみんな私をもっと高く評価するようになった
1986 the first female American captain in history
1986年  歴史上初のアメリカ人女性機長に

Suddenly I'm in the cockpit
突然  私は操縦室にいて
Suddenly I've got my wings
突然  私は翼を手に入れた
Suddenly all of those pilots protested me
突然  パイロットたちは私に抗議した
Well, they can get their own drinks
でも  飲み物は自分たちで持ってこれるでしょ
Suddenly there's no one saying, "Stay grounded"
突然  誰も言わなくなった  「地に足つけてろ」なんて
Looking down passing them by
彼らの姿が過ぎ去っていくのを見下ろす
Suddenly there's nothing in between me and the sky
突然  私と空を隔てるものが何もなくなる

Suddenly I've got an all female crew
突然  全員女性のクルーを率いることになり
The news talked, it made headlines across the world
ニュースで報道され  世界中で一面記事を飾った
Suddenly it stopped
突然  止んだ
No one saying, "You can't" or "You won't"
誰も言わない  「君には無理だ」とか「実現しない」なんて
Or "You know you're not anything 'cause you're a girl"
「『女の子だから』価値がない」なんて言葉も

Suddenly I'm getting married
突然  私は結婚して
And we're putting pins on the map where we've flown
私たちは今まで飛んできた場所を地図上にピンで示した
Suddenly I am a mother
突然  私は母親になって
And suddenly shocked at how much they've grown
突然  子どもたちの早い成長に驚いた
Suddenly I'm wondering how my parents would feel
突然  両親が私を見たらどう思ったか気になった
Seeing me teaching men to be pilots
パイロットを目指す男性たちを指導している私を
'Cause suddenly I am a senior instructor and somehow I'm 51
だって突然  私は上級指導官で  どういうわけか51才に

Suddenly I'm flying Paris to Dallas
突然  パリからダラスに向かって飛んでいて
Across The Atlantic and feeling calm
大西洋を横断し穏やかな気持ちでいた
When suddenly someone on air to air traffic says
その時突然  誰かの言葉が航空無線に乗って届いた
"At 8:46 there's been a terrorist action"
「8:46にテロ行為が確認された」
And the one thing I loved more than anything was used as the bomb
私が他の何よりも愛したものが爆弾として使われた

Suddenly I'm in a hotel
突然  私はホテルにいて
Suddenly something has died
突然  何かが失われた
Suddenly there's something in between me and the sky
突然  私と空を隔てる何かが生まれた

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このJenn Colellaさん、他にどんな作品に出てたのか気になって調べたら2014年「If/Then」って書いてあって叫びました。文字通り。

私、それ、観たよ……生で……。

その時のPlaybillを慌てて引っ張り出して見てみたらしっかり記載されていました(中段右)。マジかい...…。

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こんなことがあるとすぐ応援したくなる単純な人間なので、彼女がトニー賞取れるよう願ってます。

敬具

Come From Away

Come From Away

 

Come From Away公式サイト