空が青くて涙が出るよ

映画やミュージカルやテレビドラマの話などをします。

Tonys, Tonys, Tonys!!!

いやー待ちかねました、トニー賞!一年も待ちましたよ!!!

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もうトニー賞放送から2週間経ってるので何今更...って感じかもしれませんが、私はトニー賞のために生きてトニー賞に生かされてると言っても過言ではない人間なのでどれだけ遅くなってもこれだけは欠かせないんです、勘弁してください。去年トニー賞を録画&永久保存したいがためだけに壊れたまま放置していたBDレコーダーを買い換えましたからね。それくらいには生活の糧です。

トニー賞の魅力

トニー賞のことを知らない人からすると「何をそんな...ただの授賞式でしょ...」と思われそうですが、ただセレブがセレブに賞を与えて身内で称え合うだけの式ではないんです、トニー賞は。ニューヨークに行ってチケットを買うことでしか見られないミュージカルのパフォーマンスをテレビを通じて見ることができるんです。パフォーマンスの前には作品や曲の簡単な紹介がされるので、ミュージカルのことやその作品の内容なんか何も知らずに見ても十分楽しいですしみるみる引き込まれますよ。

あと、舞台俳優は週8回公演や長期のツアーなどをこなし続けるためにとてつもない努力と社交性と舞台愛が必要とされる職業なのでもう本当に心から尊敬できる、親しみやすい人が多いです。才能だけあっても成功するのはとんでもなく難しい世界だから、お世辞とか気休めとかではない「誰が賞を取ってもふさわしい。みんな勝者」という温かい雰囲気がトニー賞にはある気がします。

トニー賞2017

はい、今年のトニー賞の話。今年はケヴィン・スペイシーが司会でした。

......ケヴィン・スペイシー???? 最高の俳優だけどブロードウェイのイメージも司会のイメージもほぼなくない????と思ったら、今年はいろんな人に断られて司会選びに相当苦戦したらしいですね。去年のジェームズ・コーデンがこれ以上ないほどの司会っぷりを見せてしまったのも原因かも...?

司会に決まった時のケヴィンスペイシーのコメント(原文はこちら

“I was their 2nd choice for Usual Suspects, 4th choice for American Beauty and 15th choice to host this year's Tony Awards. I think my career is definitely going in the right direction,” said Spacey. “Maybe I can get shortlisted to host the Oscars if everyone else turns it down.”
ユージュアル・サスペクツでは2番目の候補者、アメリカン・ビューティーでは4番目の候補者で、今年のトニー賞の司会では15番目の候補者だった。私のキャリアは確実に正しい方向に向かっていると思うよ。オスカーの司会の最終選考にも残れるかもしれないね、他のみんなが断れば。

式のオープニングはこの難航した司会者選びをうまくネタにしたものになっていてすごく楽しかったです。シリアスな演技してるイメージが強いケヴィンスペイシーが歌ってタップダンスしてる姿を見られただけでも大興奮ですし、彼が司会に決まった時点でトニーまで2ヶ月を切ってたと思うと役者ってすごいや...って気持ちになります。

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「視聴率が取れないかもって感じたことはある?自分が司会でも誰も応援しないんじゃないかって感じたことは?(Have you ever felt the ratings could disappear, that if you host, no one would cheer?)」とか「今まさに生放送されているショーがあるけどニール・パトリック(・ハリス)はここにはいない。僕をフレッド・アステアに変身させてくれる師が必要だけどヒュー・ジャックマンはここにはいない。(There's a show going on right now on air, and Neil Patrick isn't here. There's a mentor I need to turn me into Fred Astaire, and Hugh Jackman isn't here. )」とか面白すぎ。泣ける。あとCome From Awayキャストがここで登場するとは思ってなかったのでザ・ロケッツと一緒に出てきたのを見て「キャ〜〜〜!!!かっこいい(号泣)」って感じでした。これはThe Rockと"The Rock"ettsを掛けてるってことでいいんですか...?おやじギャグ...?最高...

トニーウィークのCome From Awayビデオブログでキャストが楽屋使って練習してる様子(6:15~)とかも見ることができます。楽しい...
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ここからは超超超大雑把な個人的ハイライト。好きだった部分を全部書こうとすると3時間分の文字起こしをすることになっていつまでも記事を上げられないことに気づいたのでね。

Come From AwayとDear Evan Hansenのパフォーマンス

Come From Awayは"Welcome to the Rock"、Dear Evan Hansenは"Waving Through A Window"を披露していました。両方ともテレビ番組で何回か歌っていた曲で、私はそれを何度も何度も見てしまっていたので新鮮さはそんなにありませんでしたが、それでもやっぱり感動しましたし、作品について知ってもらって引き込むにはこれ以上ない最高の2曲だなと見てて感じました。ベンプラットが、すごい。

Come From Awayのパフォーマンス動画。"I'm an islander, I am an islander..."の力強さと"Oz, turn on your radio."からの流れでもう無理。何回でも見ます。
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Falsettosのパフォーマンス

披露したのは"A Day in Falsettoland"という曲。アルバムでしか聴いたことがなかったので今回初めて映像付きで見ることができて「こんな感じなんだ!」ってワクワクしました。そしてゴリゴリの実力者が揃ってるキャストだからめちゃくちゃ安心して見られる。お隣さんカップルの「あなたの人生がどれだけ素晴らしいかは知ってる...!(それに比べて私の人生は...)」みたいなところで心臓がきゅ〜っとなりました。しんどい。

日本から見られる動画が見つからなくて悔しいのでとりあえずトレイラーを貼っておきます。Falsettos自体の公演はもう終わっちゃってるんですが、舞台を撮影したものが7月12日からアメリカの映画館で特別上映されるそうですよ。どうにかして日本でもやってほしい。通います。どうにか...!!!
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The Great Cometのパフォーマンス

この会場でどれだけグレートコメットの独特の魅力が出せるんだろう...という不安が一瞬で消し飛びました。エネルギーに満ち満ちていて楽しい、楽しいアンド楽しい。ジョシュ・グローバンとルーカス・スティールがいい声すぎるしデネー・ベントンの笑顔がスーパーキュート。

パフォーマンスとは関係ないですが"Natasha, Pierre and the Great Comet of 1812"っていう長い作品名を省略して全部"The Great Comet"に統一して呼んでたのが潔いなと思いました。去年ノミネートされていた"Shuffle Along, or, the Making of the Musical Sensation of 1921 and All That followed"は毎回毎回この長いタイトルを略さずちゃんとみんな言ってた記憶があるから「あ、いいんだ!?」という感じ。

Bandstandのパフォーマンス

カッッッッコイ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!

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スピーチ

直接的な政権批判をする人はあまりいませんでしたが、ケヴィン・クラインが(トランプ政権のもとで廃止の危機にさらされている)国立芸術基金と全米人文科学基金に「これらの支援がなければこの会場の半分の人間はここにいなかった」と感謝を述べたり、ギャビン・クリールが大学の奨学金制度に感謝を述べて「たくさんお金を持っている人は奨学金を始めて」と言ったりと、間接的に政治的意思表明をした人は多かった気がします。

そんな中スーパー分かりやすくトランプ大統領についてコメントしたのが、オープニングにも登場したスティーヴン・コルベアでした。さすがの通常運転。
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“It’s my honor to be here tonight presenting the Tony for best revival of a musical. And it’s been a great year for revivals in general, especially that one they revived down in Washington, D.C. It started off-Broadway in the ’80s. Way off Broadway, over on Fifth Avenue. Huge production values, a couple problems: The main character is totally unbelievable, and the hair and makeup — yeesh. No, no.
This D.C. production is supposed to have a four-year run, but reviews have not been kind. Could close early. We don’t know, we don’t know. Best of luck to everyone involved.”
今夜ここでミュージカルのベストリバイバル賞を発表できることを光栄に思います。一般的に見ても今年はリバイバルにとって最高の年でした。特にワシントンD.C.で新しくなったやつ。あれはオフ・ブロードウェイで80年代に始まったものなんだ。オフ・ブロードウェイよりもっと離れたところ、5番街あたりまで行ったところでね。莫大な生産額で、問題がいくつか:主役に全く信頼が置けないことと、あの髪型とメイクーうぇっ、ないない。
このD.C.のプロダクションは4年続く予定だったんだけど、批評は好意的じゃない。早く終わる可能性もある。わからないよ、わからないけど。関係者の皆さん、幸運を。

"Huge"辺りからもろトランプを意識させるジェスチャーと声マネを入れる徹底っぷり。
※「80年代に始まった」っていうのがよく分からなかったんですが、トランプさんがマンハッタンで本格的に不動産業を始めたのがそのくらいの時期らしいのでそういうことですかね...?


ケヴィンスペイシーがビル・クリントン元大統領のモノマネをして大統領選をネタにしつつベンプラットに絡んでいったくだりもとっても面白かったです。
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This season’s been full of drama — we’ve already had some surprising winners, haven’t we? I’m not even talking about the Tony Awards.
今シーズンはドラマで満ちてる。既に予想外の勝者も出ているよね、そうだろ?トニー賞のことじゃないけど。
Now we’ve had some exciting young performers this season. Ben Platt was named one of Time magazine’s most 100 influential people. That’s very impressive. I was on that list a couple of times. But Ben, you know who you bumped off that list? My wife. No, it’s all right. Now, between you and me, you might be a better singer, but after seeing your show, there’s no doubt that Hillary’s much better at creating fake email accounts than you. I just wanted to do a joke nobody would ever think I’d do. Oh, that was fun. Yeah, but I’m going to get in trouble when I get home, that’s for sure.”
このシーズンでは何人かの素晴らしい若いパフォーマーがいる。ベン・プラットはTIMEマガジンの最も影響力のある100人に選ばれた。すごいことだ。私もそのリストには何度か載ったことがある。だけどねベン、君のおかげで誰がリストから消されたと思う?私の妻だ。いや、いいんだよ。それでここだけの話、君は優れた歌手かもしれないが、偽のEメールアカウントを作るのは君よりヒラリーの方がずっと上手いって君のショーを見て確信したよ。誰も私が言うなんて予想しないようなジョークを言いたかったんだ。ああ、楽しかった。うん、でもうちに帰ったら窮地に立たされるだろうね。それは確かだ。

ケヴィンスペイシーのいじりを最高のリアクションで返したベンプラット、スピーチも素敵なものでした。すごくエモーショナルになりつつもメモを全く見ずに超早口でキャストやスタッフ、家族("edible, edible nephews"にも)など大勢に感謝を述べていました。一部抜粋。

I want to thank my parents, who are my heroes, Julie Platt and Marc Platt, the greatest people I’ve ever met. Everybody always says that about their parents, but it’s true, I will fight you. They are the best people in the world. Dad, you’re my hero, you taught me that you have to be a decent human being to be a decent artist, and I love you for it. And finally to all young people watching at home, don’t waste any time trying to be like anybody but yourself because the things that make you strange are the things that make you powerful. Thank you.
僕のヒーローである両親、ジュリー・プラットとマーク・プラットに感謝したいです。僕が今まで出会った中で最も偉大な人たちです。みんな自分の両親についてそう言うけど本当なんだ、戦ってもいい。彼らは最高の人たちです。お父さん、あなたは僕のヒーローで、立派なアーティストになるには立派な人間である必要があると教えてくれました。最後に家で見ている若い人たち、自分じゃない誰かになろうとして時間を無駄にしないで、君を変わり者にしている要素は君を力強くする要素なんだから。ありがとう。

そして欠かせないのがミュージカル主演女優賞を受賞したベット・ミドラーのスピーチ。トニー賞側のプロデューサーとハロー・ドーリー!側のプロデューサーが揉めた結果彼女の式中パフォーマンスはなくなって見せ場がなかったにも関わらず完全にその場を支配してました。退場を促す音楽が流れても"Shut that crap off!"(!)と言って逆にその音楽を退場させて話し続ける人なんて初めて見ました...すごかった...あんなんベットミドラーだからこそできることですよ...
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その後登場したケヴィンスペイシーの"I want to get the hell out of here before Bette Midler thanks anyone else(ベットミドラーが他の誰かに感謝を述べ始める前にここから立ち去りたい)"という言葉で見事にオチました。最高。

イギリス帰りのリン=マヌエル・ミランダが楽しそうにしている姿も見られたのでもう言うことないです、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

最後に自分の名前が彫られたトニーを開封するベン・プラットとレイチェル・ベイ・ジョーンズを。か、かわいい...
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