空が青くて涙が出るよ

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多様性を求めるビリー、ティファニー・ハディッシュとNYを駆ける

3人目になりたい。

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待望の『ビリー・オン・ザ・ストリート(Billy on the Street)』新シーズン第二回目が公開されました。今回のゲストは人気急上昇中の超売れっ子スター、ティファニー・ハディッシュ。

ビリーオンザストリートの簡単な紹介はこちらでしてるので良かったら。

nicjaga.hatenablog.com

ティファニー・ハディッシュは2017年の映画『Girls Trip』(日本未公開)で大ブレイクした俳優/コメディアンで、『サタデー・ナイト・ライブ』のゲスト出演回でエミー賞を取っていたり、今年のMTV Movie & TV Awardsの司会を務めていたり、Netflixで一時間のスタンダップコメディが配信されることが決まっていたり、『ボージャック・ホースマン』の製作陣が作る新作アニメ『Tuca & Bertie』の主演(Tuca)にも決まっていたりと、もうアツいアツい。テレビ界でも映画界でも引っ張りだこな彼女が、今回はビリーと共にマンハッタンを巡り、現代版『ホーカス ポーカス(Hocus Pocus)』の主演にふさわしい人を探します。

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和訳
(日本語にするのが難しい言葉がちょこちょこあるので私なりの簡単な説明挟んだりしてます)

Billy: Hey guys, it's Billy and I'm gay.
ビリー:やあみんな。僕はビリーで、ゲイです。
Tiffany: And I'm Tiffany Haddish and I'm black.
ティファニー:そして私はティファニー・ハディッシュ。黒人です。
Billy: It's a new day in Hollywood where diversity is finally being celebrated. So Tiffany and I have decided we wanna do a more diverse remake of the classic Halloween movie, 'Hocus Pocus'. Tiffany and I are gonna play two of the three main witches and we're about to hit the streets to find someone to play the third witch to round out our more diverse cast. Are you ready Tiffany?
ビリー:ハリウッドでは多様性が称賛される新たな時代がようやく訪れてきています。そこでティファニーと僕は、名作ハロウィン映画『ホーカスポーカス』をより多様なキャストでリメイクしたいと思いました。ティファニーと僕で主役3人の魔法使いのうち2人を演じ、これから街に繰り出して、3人目の魔女(魔法使い)を演じ多様なキャストを締めくくってくれる人を探そうと思います。準備はできた?ティファニー
Tiffany: She ready!*
ティファニー:準備バッチリ!
Billy: Let's go!
ビリー:さあ行こう!

* "She ready!"はティファニー・ハディッシュを象徴するキャッチフレーズのようなものであり、自らを奮い立たせる合言葉のようなものでもあるそうです。

(0:36~)
Billy: Sir, it's Tiffany Haddish.
ビリー:すみません、ティファニー・ハディッシュですよ。
- Hi, how are you?
- どうも、元気?
Billy: Yeah, we're gonna make a more inclusive 'Hocus Pocus', are you straight and white?
ビリー:それで、僕らはもっと多様性ある『ホーカスポーカス』を作ろうとしてるんです。あなたはストレートで白人?
- Yes.
- ええ。
Billy: Oh no, okay.
ビリー:ああ、ダメ。はいはい。

(0:45~)
Billy: We need Asian witches!
ビリー:アジア系の魔女が必要なんです!
- Hi

- どうも。
Billy: We're re-doing 'Hocus Pocus' with Tiffany Haddish, where are you from?
ビリー:ティファニー・ハディッシュと一緒に『ホーカスポーカス』を作り直そうとしてるんです。出身はどこですか?
- China.
- 中国。
Billy: China! I'd love a Chinese witch.
ビリー:中国!中国人の魔女すごく見たいかも。
- Me too.
- 同じく。
Billy: Oh okay, and are you straight or gay?
ビリー:うん、それで、あなたはストレート?それともゲイ?
- I'm a lesbian.
- レズビアンです。
Billy: YES! YES! Chinese lesbian witch! Crazy witch Asians!
ビリー:エス!やった!中国人レズビアンの魔女!クレイジー・ウィッチ・アジアンズ!

クレイジー・ウィッチ・アジアンズ!!!作ろ?それ。お願いジョン・M・チュウ監督!
連れの女性の、怪訝な顔しながらもハグ時に肩をポンポン優しく叩く余裕ある振る舞いもステキ。
 

(1:04~)
Billy: Miss, we're celebrating diversity.
ビリー:どうも、僕らは多様性を祝ってるところです。
Tiffany: Hi!
ティファニー:どうも!
- Hi, how are you? Well, the only thing I can tell you about diversity is that my daughter,
- どうも、ご機嫌いかが?ええと、多様性に関することでお話しできるのは私の娘のことくらいです。
Billy: Yes.
ビリー:なるほど。
- Works for a non-profit and she, so part of her work is that.
- 彼女は非営利団体で働いているので、彼女の仕事の一部ってところですね。
Billy: Oh wow. Great story, we're making a more inclusive version of 'Hocus Pocus', remember that witch movie?
ビリー:わあすごい。いい話。僕らはより多くの人に開かれたバージョンの『ホーカスポーカス』を作ろうとしてるんです。あの魔女の映画覚えてます?
- Kind of, yeah.

- なんとなく、ええ。
Billy: So we're looking for someone to play the third witch.
ビリー:だから3人目の魔女を演じられる人を探してて。
- Oh no.
- わあ、なんてこと。
Billy: Yes.
ビリー:そういうこと。
- I'm not even from this country.
- 私この国生まれですらないんだから。
Billy: Where are you from? That's better! Where are you from?
ビリー:どこ出身です?それ一層いいって!どこ出身です?
Tiffany: The more diversity, that's perfect!
ティファニー:多様性が増す、完璧!
Billy: Where are you from?
ビリー:どこ出身です?
- Brazil.
- ブラジル。
Billy: Oh! Brazilian witch!
ビリー:わあ!ブラジル人魔女!
Tiffany: Yeees!

ティファニー:いいねえ![踊り出す]
Billy: There you go, look at that!
ビリー:やるね、見てよすごい!
Tiffany: Yeees! Mommy!
ティファニー:イエース!マミー!
Billy: Can you do that, but bigger?
ビリー:あなたもああいうのできます?もっと派手に。
Tiffany: We're gonna make a movie, it's gonna make a hundred million dollars.
ティファニー:私たちで映画を作って、一億ドルは稼ぐよ。
Billy: That's right, what are they gonna say, "she was too Brazilian to be a witch"? I'd like to see them try!
ビリー:その通り。何て言われるだろうね、「魔女にしてはブラジル人っぽすぎる」?聞いてみたいもんだよ!

(1:51~)
Billy: Oh, sir, I'm gay, she's black, what do you bring to the table?
ビリー:どうも、僕はゲイで、彼女は黒人。あなたが用意できるものは何です?
- No idea, I'm not from here, I'm from Columbia so I'm not...
- 見当つかないね、ここ出身じゃなくてコロンビア生まれだから、私は…
Billy: Columbia! That's perfect!
ビリー:コロンビア!それ完璧!
Tiffany: A Columbian witch that's perfect!
ティファニー:コロンビア人の魔法使いなんて完璧じゃん!
Billy: We want South Americans in this.
ビリー:南アメリカ人が欲しかったところなんだ。
- That's where we are.
- 我々のいるところだね。
Billy: Thank you very much.
ビリー:どうもありがとう。
- The flavor
- 味わいがね。
Billy: That's right we need a little flavor in our remake of 'Hocus Pocus'.
ビリー:その通り、僕らのリメイク版『ホーカスポーカス』にはちょっとした味わいが必要なのさ。
- You need some salsa.
- サルサがいる。
Billy: Definitely got more flavor than Kathy Najimy, I'll tell ya that much.
ビリー:キャシー・ナジミーよりも確実に味わい深いよ。それは確かだ。
- Have fun, guys.
- 二人とも楽しんで。
Billy: Okay, so you'll play a witch in 'Hocus Pocus'?
ビリー:ええ。それであなたは『ホーカスポーカス』で魔法使いを演じてくれます?
- I have no idea what that is.
- それがなんなのか全く分からない。
Billy: Okay well we'll --
ビリー:そっか、じゃあ僕らは--
[建物から白人女性が出てきて迷惑そうに後ろを通る]
Billy: Oh this white woman has no time for our more inclusive 'Hocus Pocus'!
ビリー:わあこの白人女性は多様性ある『ホーカスポーカス』に割く時間なんてないってさ!

(2:22~)
Billy: This is 2018, I'm not gonna white-wash 'Hocus Pocus'.
ビリー:今は2018年なので『ホーカスポーカス』はホワイトウォッシュ*させません。
- Okay.
- そっか。
Billy: Yes.
ビリー:ええ。

* ホワイトウォッシュ(ホワイトウォッシング):非白人として書かれたキャラクターや実在した非白人の人物役に白人の俳優を起用すること。「非白人の役はただでさえ限られているのにその数少ない役すら白人/マジョリティに渡すのか」という批判につながる。例)『ゴースト・イン・ザ・シェル』のスカーレット・ジョハンソン、『ドクター・ストレンジ』のティルダ・スウィントン、『アロハ』のエマ・ストーン、『PAN ネバーランド、夢のはじまり』のルーニー・マーラ、『ローン・レンジャー』のジョニー・デップ、『アルゴ』のベン・アフレック、『ドライヴ』のキャリー・マリガン、『ウォンテッド』のアンジェリーナ・ジョリー、『バットマン・ビギンズ』のリーアム・ニーソンなどなど。

(2:25~)
Billy: Sir, are you gender fluid?
ビリー:すみません、あなたはジェンダー・フルイド*
- No.
- いいえ。
Billy: Arghh
ビリー:ああ…

* ジェンダー・フルイド:単一の固定的な性自認を持たない人、性自認が流動的に変わる人のこと。性別二元論に当てはまらないこのジェンダー・フルイドの人々の存在もトランスジェンダーの人々の存在と共に否定しようとしているのがトランプ政権

(2:28~)
Billy: Sir, I'm looking for a fluid witch
ビリー:すみません、フルイドの魔法使い探してるんです。
- Say what?
- なんだって?
Billy: I need a fluid witch!
ビリー:フルイドの魔法使いが必要なんだ!
- A fluid witch?
- フルイドの魔法使い?
Billy: A sexually fluid witch
ビリー:性的流動性のある魔法使い。
- What the-- What is that?
- 何…何だそれ?
Billy: For woke 'Hocus Pocus'!
ビリー:ウォーク*な『ホーカスポーカス』のために!
- [mumbles]
- あーっと、誰が、え、何?
Billy: Ughhhh!
ビリー:ア゛ア゛ーッ!

* ウォーク(woke):人種差別などの社会問題や社会的不公正に対する意識を持っていること/人。Black Lives Matter運動が活発化した際に急速に広まった言葉。"Stay woke(意識的であれ/関心を持ち続けろ)"という形で使われたりする。

(2:38~)
Billy: Miss, Wokus Pocus!
ビリー:ミス、ウォーカスポーカス!
Billy: Wokus Pocus!
ビリー:ウォーカスポーカス!
Billy: Woke Hocus Pocus!
ビリー:ウォークなホーカスポーカス!

(2:42~)
Billy: Sir! Sir, can you be in our diverse 'Hocus Pocus'?
ビリー:すみません!すみません。僕らの多様性ある『ホーカスポーカス』に出てくれませんか?
- Uhh...Sure?
- ええと…いいけど?
Tiffany: Yes.
ティファニー:やったね。
Billy: Yeah, that's good. Are you straight?
ビリー:うん、いいね。あなたはストレート?
- No.
- いや。
Billy: THAT'S GOOD! What are you?
ビリー:いいぞ!あなたは何です?
- Uhh...Bi.
- ええと…バイです。
Billy: YES! A BISEXUAL WITCH! WE DID IT!!!
ビリー:エスバイセクシュアルの魔法使い!やったぞ!!!

(2:56~)
Billy: Please make way for Tiffany Haddish, her profile is growing. Please!
ビリー:ティファニー・ハディッシュのために道を空けてください、彼女の経歴は成長し続けてるんです。道を空けて!
Billy: Step aside, Tiffany Haddish's profile is growing. It's growing!
ビリー:端に寄って、ティファニー・ハディッシュの経歴は成長しています。伸び続けてるんです!

ビリーが空けた通りを大女優の立ち振る舞いで通り抜けるティファニーハディッシュの完璧さ。

(3:04~)
Billy: Miss, I'm putting five seconds on the clock, please subvert gender expectations.
ビリー:すみません、5秒間差し上げるので、性別役割期待を打ち砕いてください。
- Ummmm... I can't.
- ええーーーっと…無理です。
Billy: Okayyyy
ビリー:了解ーーー

(3:12~)
Billy: Sir, straight white men don't have a monopoly on spooky.
ビリー:すみません。ストレート白人男性には不気味な夜の占有権はありませんよ。
- I agree.
- 同感だね。
Billy: Thank you.
ビリー:ありがとう。

(3:17~)
Billy: Miss, it's Tiffany Haddish.
ビリー:すみません、ティファニー・ハディッシュですよ。
- Heeey! She ready!
- ヘーーーイ!準備バッチリ!
Billy: She ready!
ビリー:準備バッチリ!
[三人で踊り出す]
Billy: We're making a more inclusive 'Hocus Pocus.' are you excited about that?
ビリー:僕らは多様性ある『ホーカスポーカス』を作ってるとこなんです。楽しみですか?
- Yes.
- いいねえ。
Billy: Do you think America is ready for that?
ビリー:アメリカにそれを受け止める覚悟あると思います?
- They ain't ready but they better get ready.
- ないだろうけど、覚悟しといたほうがいい。
Billy: They better get ready for our more intersectional 'Hocus Pocus.'
ビリー:覚悟しといたほうがいいよ、複数の重なり合う差別構造を可視化する僕らの『ホーカスポーカス』にね!
- Heeey!
- そーーさ!

~~~番外編~~~
(3:36~)

Billy: Hey guys, it's Billy. I am out here today with he most popular and beloved 'Billy on the Street' contestant of all time. You know her, you love her, Elena, how are you, Elena?
ビリー:やあみんな、ビリーです。僕は今『ビリー・オン・ザ・ストリート』参加者の中で最も人気があり愛されている人と一緒にいます。既にご存知、あなたのお気に入り、エレーナです。調子はどう?エレーナ。
Elena: I'm fine. Pretty fine.
エレーナ:いいよ。とってもいい。
Billy: Let me tell you something. Lyft is doing that I'm honestly very excited about.
ビリー:少し言わせてほしいことがあるんだ。Lyftがやっていることに僕は正直すごくワクワクしてて。
Elena: I know what it is.
エレーナ:それが何か知ってるよ。
Billy: What is it?
ビリー:何なの?
Elena: They're gonna take people to vote?
エレーナ:投票に連れて行ってくれるんでしょ?
Billy: YES! This election day on November sixth, Lyft is going to offer discounts to riders to get them to the polls. There are 50% off discounts, and free rides in under-served communities, isn't that nice?
ビリー:そう!11月6日の選挙日、Lyftは投票所に行く乗客たちに割引を提供する予定なんだ。50%割引を申し出ていて、しかも交通機関の整ってない地域では無料で乗せてくれるんだって。素敵だと思わない?
Elena: It really is.
エレーナ:本当に素敵。

投票所に割引価格または無料で連れて行ってくれるlyftのサービス、素晴らしすぎませんか。ライバル会社のUberも同じようなサービスを提供すると決めているそうで。いやこれはすごいわ。全然知らなかった。


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ビリー・アイクナーは『ビリー・オン・ザ・ストリート』のような基本的にくだらなくてエンタメに特化した作品を作ったりしている一方で、Glam Up the Midtermsというキャンペーンを立ち上げ若年層の投票率を上げようと超精力的に活動している人でもあります。芸能人であっても「政治的なもの」から逃げないこの姿勢。自分の影響力も分かってるし政治が自分たちの生活や文化に与える影響力も分かってるこの感じ。日本ではなかなかお目にかかれないので眩しいです。そういった「政治性」を忌避してきたテイラー・スウィフトようやく腰を上げましたし、中間選挙では良い方向に動いてほしい。切実に。

あと最後にもう少しだけティファニー・ハディッシュの話をすると、彼女は昨年末に自伝を出していて、これがめちゃくちゃ面白いらしいので読みたいんですよね。

The Last Black Unicorn (English Edition)

The Last Black Unicorn (English Edition)

 

こちらは彼女がデイリーショーに出てこの本の話をしている動画。「太陽が人の形をしていたらどんなだろうといつも疑問に思っていたけど、遂にその答えを見つけた気がするよ」とトレヴァーに言わせるほどの魅力が彼女にはあります。

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ホームレスだったティファニーハディッシュが住む場所欲しさにサイエントロジーに入信するも反りが合わず脱退する(並大抵のことじゃ脱退させてくれないサイエントロジーが脱退させる)話、読みたすぎませんか!?