空が青くて涙が出るよ

ブログタイトルはビートルズのBecauseという曲からです。深い意味はありません。

トニー賞授賞式2018 感想とか①

来年までの糧。

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ミュージカル・演劇の祭典、トニー賞が日本時間6月11日に無事行われました。

結果としては、ミュージカル部門は『バンズ・ヴィジット(The Band's Visit)』の一人勝ちという感じで、ノミネートされていた11部門中装置デザイン賞(スポンジボブが獲得)を除く10部門をかっさらっていきました。次に多く授賞したのは『回転木馬(Rodgers & Hammerstein's Carousel)』で2部門。最多12部門でのノミネーションを果たしていた『ミーン・ガールズMean Girls)』の授賞はゼロに終わりました。世界は残酷。演劇部門は事前予想通り『ハリー・ポッターと呪いの子』と『エンジェルス・イン・アメリカ』が強かったですね。

今年作品賞にノミネートされた新作ミュージカル(The Band's Visit, Frozen, Mean Girls, SpongeBob)は全て映像作品からのアダプションでした。私は、その元になった映画/TVのうち『アナと雪の女王(Frozen)』しか見たことがなかった上に今年はあんまり下調べもしてなかったのでそれぞれがどんな内容か知らなかったんですが、The Guardianによると、共通点は「孤独や疎外感を感じている人物についての話」であることと、「他者との対話や交流がその治療薬となる」ところだそうです。そしてThe Band's Visitが大きく勝ったのは、派手なパワー・ポップよりも親密な洗練された音楽が求められていたからではないかと分析していました。

この親密さを求める傾向というのは授賞式全体を通しても感じられました。Varietyは「例年に比べると小規模に思えるが、そのハートは測定不能なほど大きかった」と書いていて、その言葉の通り派手さはないものの見ていて非常に心地の良い授賞式でした。そしてこの「低予算だけど包括的な温かい授賞式」という今年のトニー賞の雰囲気を決定づけたのが、司会のサラ・バレリスとジョシュ・グローバンが披露したオープニング・ナンバーだったのではないでしょうか。

Tony Awards 2018: Opening Number | Facebook
YouTubeに上げられているトニー賞公式の動画は日本からはアクセスできないので、パフォーマンスやスピーチの動画を見たい場合はFacebookTony Awards On CBSページに行くといいですよ。日本でも見られる動画を大量に上げてくれているので。ここでリンクを貼っているものも全てそのページに飛びます。)

以下、歌詞

So it begins, these are the Tonys, the theatre tournament / Find out who wins
さあ始まる  これはトニー賞  舞台におけるトーナメント  誰が勝つのか確かめよう
Who gets to go home with that glorious ornament 
あの輝かしい装飾品を持ち帰ることができるのは誰?
We are your hosts, and we're perfectly suited to be
司会は私たちでこれは完璧な人選
Because, did you know?
なぜなら  知っていましたか
Neither one of us has ever won anything
二人のうちどちらも何も勝ち取ったことないから

That can't be right, Sara. No, you, no Grammys for you? really? no?
そんなはずないでしょ、サラ。君にグラミー賞もなし?ほんとに?ないの?
No, no, nothing, nothing. You know, and i'm shocked for you
ない、ない、何もない。ねえ、あなたのこともショックなんだけど。
Yeah well, you know, it is what it is
ああ、うん、まあ、それが現実さ。
Aaanyway,
とにかく…

So let's take a moment for all of us, before all the winners shine bright
だから私たちみんなのための時間を設けよう  勝者が眩しく輝くよりも先に
Lest you forget about 90 percent of us leave empty-handed tonight
私たちのうちの90%が今夜手ぶらで帰ることになるんだって忘れないように
So this is for the people who lose
だからこれは敗者たちに捧げる
'Cause both of us have been in your shoes
だって私たち二人ともその立場に身を置いてきたから
This one's for the loser inside of you
これはあなたの中の敗者に捧げる
This is for the people who don't get to take the torophy home
これはトロフィーを家に持ち帰ることができない人々に捧げよう
You worked so hard and you look so pretty
一生懸命頑張ってきれいな見た目にして
Got your butt to radio city
ラジオシティまでやってきたんだ

Take it from two, singin' in tuxedos
タキシード姿で歌ってる二人の言葉を信じて
Smile tonight no matter how it goes
今夜は笑顔で  何が起こったとしても
Remember the shows who've proven a lack of top honor won't make you a goner
思い出して  これらのショーが証明してる  最高賞を持ってなくたって見込みがないわけじゃない
It might even make you a host
司会にだってなれるかもしれない
Jesus Christ Superstar, Dreamgirls, and Hair
ジーザス・クライスト・スーパースター  ドリームガールズにヘアー
Wow, Hair?
ほんとに  ヘアーも?
I know, it's Hair. Into the Woods!
そうなんだ  ヘアーだよ  イントゥ・ザ・ウッズも!
Ahh, but it's so good
ああ  でもあれすごく良いのに
Yeah. lost it to the phantom
だよね  ファントムに負けたんだ
Couldn't they share
分け合えなかったの?
Chicago and Waitress are still selling the tickets
シカゴにウェイトレスはまだチケットが売れてる
But neither one won best musical
でもどっちも作品賞を取ってない
And one of the most produced show is mother******* Seussical!
しかも最も売れたショーの一つはマザー******スージカルだって!

So this is for the people who lose
だからこれは敗者たちに捧げる
'Cause most of us have been in your shoes
だって私たちのほとんどがその立場に身を置いてきたから
Look, you're at the Tonys / This one's for you
見て  あなたはトニーにいる  これはあなたのためのもの
And this is for the people who don't get to take the torophy home
これはトロフィーを家に持ち帰ることのできない人々に捧げよう
Work so hard to write your ditty
一生懸命働いて歌を書いたんだ
Raise your glass to radio city
ラジオシティにグラスを掲げよう
As much as we all love a rave of you
称賛を浴びれば何よりだけど
We're here 'cause we'll love it even if we lose
私たちはここにいる  だって敗れたとしても愛し続けるから
What lasts are the stories and how we all feel
残るものは物語と私たちが抱いた感情
These shows help us open our hearts and they heal
ショーは私たちの心を開かせる手助けをし私たちを癒やす
In a world that is scary and hard to endure
怖くて耐えがたい世界では
If you make art at all, you are part of the cure
芸術を生み出すというだけで癒しの手助けができる
So weather you close in a week or ten years
だから閉幕するのが一週間後でも十年後でも
Antoinette honors everyone here
ここにいる全ての人を称えよう

Ladies and gentlemen, representing the hardest working men and women on broadway, ensemble members from every nominated musical tonight!
紳士淑女の皆さん、ブロードウェイにおいて最も勤勉な男性たちと女性たちを代表し、今夜ノミネートされた全てのミュージカルからアンサンブルメンバーの登場です!

So this is for the people who plays
これは全ての演技者に捧げる
To honor the show everyday
ショーにいつでも敬意を払っているから
Oh broadway, look you're at the Tonys / This one's for you
ああブロードウェイ  見て  あなたはトニーにいる  これはあなたのためのもの
And this is for the people who choose to follow our dream
これは夢を追うことを選んだ人々のためのもの
Tip your hat and raise your glasses
帽子を持ち上げグラスを掲げよう
To fill this field with total badasses
この領域を最高にイカした奴らで埋め尽くすために
We welcome you to Tonys number seventy-two
72回目のトニー賞に歓迎します
This one's for you
これはあなたのためのもの

名前が広く知られない割に責任も仕事量も膨大で大変なアンサンブルメンバーたちを呼び、彼らにスポットライトを当てたところで胸がいっぱいになりました。ここで会場一杯の歓声が湧き起こるところも、演者観客問わずみんな楽しそうにしてるところも、舞台コミュニティ特有の一体感が感じられて最高。

サラ・バレリスとジョシュ・グローバンの二人は本業で歌手やってるから歌もピアノもお手の物だし、生の観客を相手にする大舞台の経験も豊富なのですごく心穏やかに見られるなあと思ってたんですが、サラ・バレリスのピンヒールの細さと高さを見たときはさすがに怯えました。あんなの私だったら2歩でコケる。そして立ち上がれない。あのヒールでピアノ弾いて涼しい顔で歌いながら歩くなんて…。これが〈スーパースター〉ってやつか…!


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ここから先は印象に残ったパフォーマンスについて順番に書いていきます。


ミーン・ガールズ(Mean Girls)

ライオンキングやウィキッドやハミルトンなど人気ミュージカルのTシャツを着たミュージカルオタクっぽいグループのみんながノリノリで真っ先にコーラスにまわるのが面白かったし可愛かったです。女子三人組の頭であるレジーナ・ジョージを演じたテイラー・ルーダーマンはものすごい場の支配力を持っていて、主演を差し置いて主演女優賞にノミネートされるだけあるわ…と思いました。

このパフォーマンス後に、バックステージにいるレイチェル・ブルームが映し出されのもめちゃくちゃ嬉しかったです。「私の青年時代にいた意地悪な女の子たち(mean girls)が歌って踊れたなら、彼女らが私に向けた、"醜い負け犬で愛なんか見つけられっこない"という言葉ももっと受け入れられたかもね」みたいなこと言ってて涙出た。彼女強いですよね。私にとってはあなたこそクイーンですよ…!


スポンジボブ/スクエアパンツ(SpongeBob SquarePants)

このミュージカルに楽曲を提供した超有名シンガーソングライターたちを武器にマウントとってくるスポンジボブに笑いました。いやほんとめちゃくちゃ豪華ですよねこの作品。作曲者リスト初めて見た時震えました。

披露した曲はイカルドが主役になる"I'm Not a Loser"。やっぱりまずは何と言ってもコスチュームデザインがすごい。よく考えますねこんな見栄えのするもの。ギャビン・リーの身体能力も合わさって、タップしながらくるくる回るところとか「本物の脚どれだっけ?あ、全部か…」という気持ちになりました。あと動きもヌメッとしていたり唇が絶妙に青っぽかったり、いろんなところで海中生物感が表現されていて見ていて楽しかったです。
 

"8 Times a Week"

授賞式途中で司会の二人が披露した、舞台の週8回公演という超ハードなスケジュールを皮肉って憂いた曲"8 Times a Week"、天才的に面白かったです。この曲はシーアの『シャンデリア(Chandelier)』のメロディに合わせて作られていて、このシャンデリアって歌うのめちゃくちゃ難しい曲だと思うんですけど、そんなものでもこの二人は全く危なげなく歌い切っちゃうところがさすがだなと思いました。

以下歌詞。

Broadway folk can't get hurt, can't feel anything
ブロードウェイの人間は怪我できない  何も感じられない
If you want to work, you push it down, you push it down
働きたいなら抑え込まなければ  抑え込むんだ
Never out, never sick, don't stop, no holiday meals from your mom's stovetop
出かけられず  病気になれず  立ち止まらない  母さんがコンロで用意した祝日のご飯もお預け
You'll see your friends again when the contract ends
友達にまた会えるのは契約が切れたとき
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8
Count the shows again / This can't be right
もう一度公演を数え直して  そんなはずない
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7
Who designed the schedule without a weekend
誰が考えたの  週末のないスケジュールなんて
I've gotta sing this thing 8 times a week / Sing it 8 times a week
私は歌わなければいけない  これを週に8回  週に8回歌うの
I want to screem but I really can't speak
叫びたいけど声を発することもできない
I'm on vocal rest all week
週丸々声を休ませなければいけないから
Who in their right minds would schedule the plays to be twice in a day?
誰が正気な状態で一日二回公演なんてスケジュールを組むわけ?
I've gotta sing this thing 8 times a week / Sing it 8 times a week
私は歌わなければいけない  これを週に8回  週に8回歌うの
I'm holding on for dear life
愛する人生のために持ちこたえてる
Someone check on my kids and my wife
誰か僕の子どもと妻の様子を確かめてくれ
Oh dear broadway you're out of my league
ああ愛しのブロードウェイ  あなたは高嶺の花
Why the hell is this 8 times a week
週に8回って一体どうしてなの
 

回転木馬 (Rodgers & Hammerstein's Carousel)

ダンスナンバーに振り切って一曲丸々見せてくれたのが良かったです。私はダンスが全く分からないので終始「わ、なに、船?わーかっこいい、今めちゃ回った、うま!跳んだ、軸!軸!ブレないねえ!え、ジョシュア・ヘンリーも踊る?踊った!うま〜!いや身体軽すぎるおかしい、空気でできてるんだきっと!なるほどねー」みたいな浅はかな感想しか出てこなかったんですが、目が離せなくてもうとってもカッコよかったです。踊れるっていいなー!

高校生たちによるパフォーマンス

今年の演劇教育活動賞は、フロリダのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の演劇指導員であるメロディ・ハーツフェルドに贈られました。彼女はこれまで15年以上生徒を教え50以上の舞台を監督しており、2月に起きた銃乱射事件の当日には65名の生徒を彼女の小さなオフィスに2時間匿うことで命を救ったそうです。そしてその後は、生徒たちに、この悲劇が彼らの生き方に及ぼした影響を舞台と音楽を使うことで表現するよう働きかけているそうです。

トニー賞では、そのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の生徒たちによるサプライズパフォーマンスが行われました。曲はレント(Rent)の"Seasons of Love"。ちょっと涙なしには見られないです。

この銃撃事件の被害者やその家族のサポートに何かしたいという方は、下記リンクから寄付ができます。

Fundraiser by Broward Education Foundation : Stoneman Douglas Victims' Fund


アナと雪の女王(Frozen)

アニメ版では、"Let It Go"は最後語りかけるような歌声で「フフン」という余裕の表情を見せながら締めていたと思うんですが、舞台版ではその最後の最後の部分をアレンジし、「跪きなさい!私が女王よ!!!!」という感じで全風力とエネルギーを解放してこちらに向けてきたところがめちゃくちゃアツかったです。振り切れたエルサだ!容赦ない量の雪降ってたように見えたけど少しも寒くないわ!


ディア・エヴァン・ハンセン(Dear Evan Hansen)

去年作品賞を取ったDear Evan Hansenのパフォーマンスが今年もあることは知っていたんですが、いつ何を披露するのかは知らなかったので、追悼でバラード調のFor Foreverを歌い出した時はなるほどと思いました。上手い使い方しますね。アレックス・ボニエロがカンパニーの一員として馴染んでいたのもほっこりしました。

アイランド(Once on This Island)

リバイバル作品賞を授賞したOnce on This Islandのパフォーマンス。別の劇場からの中継かと思った…。めちゃステージ広いですねラジオシティミュージックホール。あの砂と水のステージはどうやって持ってきてどうやって裏に保管していたのか気になります。このミュージカルは喉の強い方々がいっぱい出演されていて凄く楽しそう。今回披露した"Mama Will Provide"では、Gleeでユニークを演じたアレックス・ニューウェルの輝く姿が存分に見られたのが嬉しかったです。

主役のヘイリー・キルゴアも登場から歌から踊りまで最高でしたし、彼女はこの写真だけでも優勝。

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バンズ・ヴィジット(The Band's Visit)

トニー賞授賞式って、作品の内容は全く知らなかったとしても深く胸に刺さってくるパフォーマンスが毎年一つは必ずあるんですけど、今年はこれがそれでした。主演の二人ともその場からほぼ動かないのに表現力が凄まじくて、その微かな動きと表情を追うだけでも涙が出てきます。カトリーナ・レンクは足の上においたナプキンの動きさえコントロールしてるんじゃないかと思わせてくれるし、目に涙を溜めどこまでも優しい表情をするトニー・シャルーブには号泣しながら「I feel you…」と言いたくなる。 

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印象に残ったスピーチ編もやりたかったんですけどちょっと長くなりすぎるなと思ったので次のエントリーにまとめようと思います。読んでくださってありがとうございました。

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