空が青くて涙が出るよ

映画やミュージカルやテレビドラマの話などをします。

旧作映画一人観賞会 〜その1〜

新作映画を全然観に行けてないので、観たいと思いつつ観ていなかった旧作映画、観たような気はするけど内容を覚えていなかった旧作映画、人からお勧めしてもらった旧作映画を中心に、最近観た旧作映画のゆるい感想を書いていこうかなと思います。その1と題してはみたけど続くかは分かりません。普通にネタバレするのでよろしくね。

 

ムーラン・ルージュ(Moulin Rouge, 2001)
監督:バズ・ラーマン 脚本:バズ・ラーマン、クレイグ・ピアースf:id:nicjaga:20200316103459j:plain
"The show must go on."
「ショーは続けねばならない」

高熱に浮かされているときに見る悪夢みたいな映像が続くのがめっちゃ面白かったです(特に序盤)。撮りたい画を撮りたいだけ撮った後に「映画として完成させるにはストーリーが必要なのでは?」と気づいてしまって、そこから無理やりストーリーを考えてくっつけたような映画だなとは思いましたが、ニコール・キッドマンのコメディ演技が見られたのでもうなんでも良いです。満点。公爵を説得して資金を出す決断を下させるシーンだけあと50回くらい観たい。「恋愛しない人生に価値などない。愛こそ全て」な恋愛至上主義ユアン・マクレガー、眺めてる分にはかわいかったけど実際近くにいたらめ〜〜〜ちゃウザいだろうなと思いました。画面の切り替えが早くて、「今この瞬間を命を燃やしながら生きている」感が出ていたのは良かったんですが、ダンスをじっくり見られないのが寂しかったです。舞台版が観たい。

シェルブールの雨傘(Les Parapluies de Cherbourg, 1964)
監督・脚本:ジャック・ドゥミ 音楽:ミシェル・ルグラン
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"Toi, tu vas bien?"
「あなた 幸せ?」

愛聴しているポッドキャスト『Keep It』にヴァンパイア・ウィークエンド元メンバーのロスタムさんがゲスト出演した際に話していた、「デイミアン・チャゼル監督がラ・ラ・ランドを作るにあたって大きな影響を受けたと言っているシェルブールの雨傘はゲイ*1の監督が撮っていて、彼の多くの作品には同性愛の暗喩が含まれている(でもラ・ラ・ランドにはない)」という話を思い出しながら観ました。ロスタムさんが具体的にどの部分を指していたのかは分かりませんが、たぶん、情熱的にお互いを愛し将来を誓い合っていた二人が、「伝統的価値観」に抗うことはできずに最後にはそれぞれ別の人と結婚する、というストーリーラインのことですかね?「運命の人」との恋ではなく、現実的な相手、親も強く勧めてくるほどに世間体の良い相手との結婚を選んだジュヌヴィエーヴと、「運命の人」ジュヌヴィエーヴと結ばれないと分かると、家族のように信頼していて、自分を好きでいてくれた近しい友と結婚したギイ。この二人に、「心から愛した相手との結婚」が現実的な選択肢にはなり得ない社会を生きる同性愛者たちの、哀しみを伴うライフストーリーが投影されていたのかなと感じました。

全編歌で構成されていて、かつ歌は歌手が吹き替えているとのことで、サイレント映画でもないのに出てくる俳優たちの声を最後まで一度も聞くことがなく終わるというのがちょっと不思議な感覚というか、面白いなと思いました。

さよなら、ぼくのモンスター(Closet Monster, 2015)PG12
監督・脚本:スティーヴン・ダン 
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"I'm Oscar." "Me, too."
「僕はオスカー」「俺も」

離婚話を切り出す直前に両親がオスカーに贈った動物、何?と思っていたら「ハムスター」だと説明されて、ハムスター!?ハムスターってこんなんだっけ!?とカルチャーショックを受けました。私の持っていたハムスターのイメージとは違ったけど野生味があってかわいかったです。そしてそのハムスターのバフィーはコメディ要員でもあったので別れが悲しすぎた。最後までユーモアがあったのは良かったけど…。「爪に何かついてる」と学校の女の子に言われからかわれるシーンで胸が痛み、成長したオスカーが同じ言葉を自ら期待を込めて言ってみるシーンで胸が潰れました。軽い冗談でも、根拠が何もないと分かっていても、言われた側に思うところがあるといつまでも心に残り続けたりするよね。
 

アバウト・ア・ボーイ(About a Boy, 2002)
監督:クリス・ワイツポール・ワイツ 脚本:ピーター・ヘッジズクリス・ワイツポール・ワイツ 原作:ニック・ホーンビィアバウト・ア・ボーイ
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"All men are islands."
「人はみな孤島だ」

『さよなら、ぼくのモンスター』に続いてハムスター再び!と思っていたら出たのは最初だけだったので寂しかった。冒頭の「学校に行くしか選択肢はない」モノローグひとつで、ニコラス・ホルトくん演じるマーカスが理知的な子であり、一歩引いたところから物事を見られる(見る癖がついている)子だと分かり、スマートな人物紹介だなと思いました。母子家庭の親子が抱える問題に子育て経験のない独身男性がちょっと首を突っ込んだら「これまで無かった視点が生まれて」たちまち問題解決!みたいな流れにはならなかったのが良かったです。ひとりよがりの「解決策」を出すのではなく、側にいて声を聞いて支え続けるのが大事だよね。空っぽな人間だと自分でも分かっていて、それで構わないと思いながら生きていたウィルが、その事実を受け止め、正面から向き合わざるを得なくなった時の苦悶の描写にヒリヒリしました。トニ・コレットが出ていたのを知っていたらもっと早く観てたと思います。

ゲーム・ナイト(Game Night, 2018)
監督:ジョン・フランシス・デイリー、ジョナサン・ゴールドスティーン 脚本:マーク・ペレス
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"We don't need fun. We just wanna win."
「楽しさはいらない  勝てればいい」

コメディだよねーと思いつつ再生したら、ホラー/サスペンス映画としか思えない緊張感のある画面作りに遭遇して、でもやっぱりコメディで、更にそこにアクションとミステリ要素も加わって…と、最後までジャンルがよく分からないまま進むのが面白かったです。主役カップルが始めからずっと仲良しでお互いのことが大好きで対等な関係性で、映画を盛り上げるためのしょうもない喧嘩が途中で挟まったりしないところがすごく良かったし好きでした。困難を乗り越えるためにチームになるのではなく、最初からチームだったんだよね。お兄さんを拐っていく誘拐犯に「安全運転でね!」と声をかけて穏やかに見送るみんなも、ゲーム・ナイトと言う割に正攻法でなぞなぞを解こうとしているカップルが一組しかいなかったのも最高でした。

ニュー・シネマ・パラダイス(Nuovo Cinema Paradiso, 1988)PG12
監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ 音楽:エンニオ・モリコーネアンドレア・モリコーネ
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「自分のすることを愛せ  子供の時映写室を愛したように」

少年時代のイメージが強かったので少年時代が映画の大半を占めているのかなと思っていたらそうでもなかった。回想が長すぎて観てる途中で回想だということを忘れる系映画。映画館が、映画を楽しむ場でありつつ、地元コミュニティーの人々が一堂に会し経験を共有する場にもなっていたのが良かったな〜と思いますし、私も地元の小さな集会所で開かれていた映画観賞会が好きだったな〜と懐かしい気持ちになりました。「相手にも自分を好きになってもらいたいから相手の家の外で毎日待ち続ける」を実行しちゃう青年トトの気持ちと、それで付き合おうと思うエレナの気持ちは分かりませんでした。よく知らない相手に毎日毎日家の前(の自分の部屋の窓から見える場所)でただ待ち続けられても、湧くのは罪悪感か恐怖心くらいじゃない?

自分はこの町に残され生涯をそこで過ごすことになるだろうに、若い世代に「ここにいてはダメだ、あなたには未来がある」と伝え、出ていかせる優しさと哀しさ。大人たちにだって欲も理想もあるだろうに、そういうので子どもを縛って引き止めたりしないのはいいことかなとは思いますが、アルフレードの主張が極端すぎて「え、それあなたの一存で決めていい範疇超えてない?!」とヒヤヒヤしました。

この映画(舞台)のことを考えずにはいられなかったで賞↓


インターステラー
(Interstellar, 2014)
監督:クリストファー・ノーラン 脚本:クリストファー・ノーランジョナサン・ノーラン 撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
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"It's not a ghost. It's gravity."
「幽霊じゃない  重力だ」

劇場公開時(たぶん)から「え、観てないの!?」と圧をかけられ勧められていて、勧められるたびに「観ます…」と答えていたインターステラー。ようやく観ました。めちゃくちゃ面白かったです。ありがとうございます。SFでありながらすんごく人間的な話だったところが好きでした。この映画より先に『オデッセイ』を観ていたのでマット・デイモンが登場したときの「彼がいればなんとかなるでしょ」感が凄かったんですが、まさかの悪役という。個人的感情よりも種の存続を優先させろと説いていたマン博士が一番個人的感情に支配されていたというオチが良かったですし、彼もおそらく任務に就いた頃には自分一人の生死など人類の存続に比べればちっぽけなことと心から信じてたんだろうな、と思える、人間味溢れる悪役で良かったです。終わりのない孤独しか残されていないと悟った時に自分がどんな行動を取るかなんて実際のところ分からないもの。

「幽霊だと思っていたものが実は自分/自分に近しい人だった」展開、大好き。

マグノリアの花たち(Steel Magnolias, 1989)
監督:ハーバート・ロス 脚本:ロバート・ハーリング 原作:ロバート・ハーリング『Steel Magnolias』
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"Why are you in such a good mood? Did you run over a small child or something?"
「なぜそんなに上機嫌なの?車で小さな子どもでも轢いた?」

実話ベースで、元が戯曲で、群像劇で、メインキャラクターがみんな女性で、かつ若い年齢層に偏ったりしていなくて、つらい話だけど笑いも光もあって…と、好きな要素しかない。この映画をまだ観たことがない方は私の文章なんか読んでないで観てください。そしてクレリーとウィザーの関係性がどれほど素晴らしいか書き綴って私に送ってください。クレリーとウィザーほんと…この二人のやりとりを永遠に見ていたい。普段なら「私はひどい人間ね」とウィザーがこぼしているのを聞けば「その通り、今頃気づいたの?」くらい言いそうなクレリーも、本気でウィザーが落ち込んでいると分かっている時、ジョークを言っても元気にならない時には「ひどい人間なんかじゃない」とちゃんと返してクレリーなりに慰めるの、泣ける。ほんのちょっとした会話の中にも人間性が詰まっていて好きでしかないです。ウィザーの台詞「演劇は観ない。昼寝ならお金を払わずとも家でできるから(I do not see plays, because I can nap at home for free)」は演劇版にもあったのでしょうか。

アルマジロ(を模した)ケーキ(なぜ?)に想像以上の死体感があって震えました。

ミーン・ガールズMean Girls, 2004)
監督:マーク・ウォーターズ 脚本:ティナ・フェイ 原作:ロザリンド・ワイズマン『女の子って、どうして傷つけあうの?(Queen Bees and Wannabes)』
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"On Wednesdays, we wear pink."
「水曜日はピンクの服で」

ジャニスとダミアンのコンビが常に最高。ジャニスはなぜ最後男の子とくっつくのか。アーロンは割とレジーナに流されるがままだったのにケイディ相手になぜあんなに訳知り顔ができるのか。最後の、プラスチックのティアラを分ける演出が良かったなと思います。「誰だって誰かに好かれたいしチヤホヤされると気持ちいいけどそれがアイデンティティーになったらやばい」というメッセージは、いいねの数が可視化されるSNS社会を生きる私たちが覚えておきたい教訓ですね。ブロードウェイミュージカル版ミーン・ガールズには、「(人気者の)あんたと一緒にいるために自分を変えるくらいなら一人で自分らしくいる」という内容のジャニスの曲があって最高なので聴いてね。Love ya!

*1:バイセクシュアル?