空が青くて涙が出るよ

ブログタイトルはビートルズのBecauseという曲からです。深い意味はありません。

トニー賞授賞式2018 感想とか②

えっ、いつの話……

nicjaga.hatenablog.com

6月にアップした上の記事内で「次回は印象に残ったスピーチについて!」みたいなこと書いときながら全く更新しないというずぼらっぷりを見せてしまったので、今更ながら上げておきます。

スピーチ自体は今聴いても涙が出そうになるくらい真摯で普遍性のある素敵なものばかりなので問題ないんじゃないかなと思います。「そこまで酷いことできる?」のレベルを日々更新し人間性を失い続けているトランプ政権を見ている今だからこそ一層胸にくるとも言う…。中間選挙の結果見るの怖すぎる…。

 

ネイサン・レイン

エンジェルス・イン・アメリカ/Angels in America』で演劇助演男優賞に輝いたネイサン・レイン。初めに他の候補者たちに敬意を示し、次に関係者各位に丁寧にお礼を言いながら現代におけるこの劇の重要性を説き、そして最後にパーソナルな感情を露わに夫に感謝を述べると共にこの役にかける自身の想いを語るという隙のない完璧なスピーチでした。できる大人だ…。プレゼンとかもめちゃくちゃうまそうなのでTEDトーク出てほしいです。

I'm standing here because Tony wrote one of the greatest plays of the 20th century. And it is still speaking to us, as powerfully as ever in the midth of such political insanity. (中略)And most importantly to my - to my dear - oh my I'm a mess - to my dear husband Devlin Elliot, the greatest blessing of my life. About eight years ago, I decided that I need to shake things up, I needed to scare myself again and challenge myself more, because I felt I had more to offer as an actor. This performance has been the culmination of a lot of that work, and this award is a lovely vote of confidence that I’ve been on the right path. Thank you very much.

私がここに立っているのは、トニー(・クシュナー)が20世紀を代表する偉大な演劇の一つを書き上げたからです。そしてこの作品は、政治的狂乱の真っ只中にいる現代の私たちにも変わらず強く訴えかけてきます。(中略)そして何よりも重要な私の…私の愛する…ああ、酷い有り様だな…私の愛するデヴリン・エリオットに。私の人生にもたらされた最上の幸福です。8年ほど前に、私は現状を揺り動かす必要があると思いました。もう一度自分を不安にさせ、もっと自身に挑戦する必要があると。なぜなら私には俳優として提供できるものがもっとあると感じたからです。この演技はそれらの挑戦が重なり合った上に成り立っているのです。そして、この賞は私が正しい道を歩んでいることを示す素敵な信任票になりました。どうもありがとうございます。

 

エイミー・シューマー

ミュージカル部門リバイバル作品賞にノミネートされた『マイ・フェア・レディ/My Fair Lady』の紹介はエイミー・シューマーが担っていました。今公演は、「マイフェアレディって上流階級の男が『教養のない娘』の振る舞い方に口を出して『レディ』に仕立て上げる話だよね?現代で見るの割とキツくない?なんで今更再演を?」といった疑問を抱く現代人も納得の作りになっているようです。

Hi. I am beautiful theater actress, Amy Schumer.
The first nominee for best revival of a musical is based on George Bernard Shaw's "Pygmalion," a comedy about class and sexism. it tells a story of scrappy flower girl Eliza Doolittle who's transformed by Henry Higgins, a man-splaining expert on dialects. This interpretations celebrates Eliza's growing self-confidence, and hilights equal rights for women. 'Cause we actually don't have that. In Eliza's words, the difference between a lady and a flower girl is not how she behaves, but how she is treated.

どうも。美しい舞台女優のエイミー・シューマーです。
ミュージカルリバイバル作品賞候補の一作目は、ジョージ・バーナード・ショーの『ピグマリオン』を原作とする、階級社会と性差別を扱ったコメディです。この作品では、貧しい花売りの娘イライザ・ドゥーリトルが、マンスプレイニングが得意な言語学者ヘンリー・ヒギンズの手によって変身を遂げるまでが描かれます。今回の演出で称えるものはイライザに芽生える自信であり、強調するのは女性の平等な権利です。現実にはありませんからね。イライザの言葉を借りると、「淑女と花売り娘の違いはその立ち振る舞いなどではなく社会における扱われ方なのです。」

舞台でも映画でも、過去の作品をリバイバル/リメイクする際に、その作品が内包していた問題点に目を瞑らず向き合おうとしていたり、これまでにはなかった新しい視点を取り入れて語り直そうとしているものってすごく良いですよね。ろう者と聴者の間に存在する情報格差の問題を描いてみせたDeaf West版『Spring Awakening/春のめざめ』とか、冴えない中年女性を主役にすると共に「セクシーで頭が空っぽな受付」枠に男性を当てはめてみせた2016年版『ゴーストバスターズ』とか、画面に映る人種を白人に偏らせなかった『スパイダーマン:ホームカミング』とか。あとはディズニー実写版の『美女と野獣』も(あんまり上手くいってたとは思えないけど)頑張ってたし…。こういう姿勢が感じられる作品好きです。

 

リンジー・メンデス 

回転木馬/Rodgers & Hammerstein's Carousel』でミュージカル助演女優賞を取ったリンジー・メンデスのスピーチ。他の何者かを装わずに自分自身でいられること、それが評価されることへの感謝を伝えていました。 

When I moved to New York, I was told to change my last name from Mendez to Mathews or I wouldn’t work and I just want to say how proud I am to be part of a community that celebrates diversity and individuality. To all of you artists out there, be your true selves and the world will take note. Thank you so so much.

私がニューヨークにやってきた時、苗字をメンデスからマシューズに変えるよう言われました。そうしなければ成功しないと。これだけは言わせてください。多様性と個性を祝福するコミュニティーの一員でいられることを私がどれだけ誇りに思っているか。世にいるアーティストたち、真の自分になってください、そうすれば世界は気付いてくれる。本当に本当にありがとうございます。

 

アリエル・スタッチェル

『バンズ・ヴィジット/The Band's Visit』でミュージカル助演男優賞を取ったアリエル・スタッチェルも、偽りのない自分でいられる場所の希少性と重要性を個人的なエピソードを交えて伝えていました。

Both of my parents are here tonight. I have avoided so many events with them because for so many years of my life I pretended that I was not a Middle Eastern person. And after 9/11, it was very, very difficult for me, and so I concealed and I missed so many special events with them. And they are looking at me right now, and I can't believe it. I am just so thankful to Oren Wolf. John and John for being courageous, for telling a small story about Arabs and Israeli's getting along at a time where we need that more than ever. I am part of a cast of actors who never believed that they would be able to portray their own races, and we are doing that. And not only that, but we are getting messages from kids all over the Middle East thanking us and telling us how transformative our representation is for them. And so I just wanna thank the whole team. Cromer, Yazbek for writing amazing song. Itamar, I'm so proud of you. My cast. This is the craziest moment of my life, I never thought I'd be there. I want any kid that's watching to know that your biggest obstacle may turn into your purpose. Thank you very much.

両親が今夜ここに来ています。私はこれまで彼らとの数多くのイベントを避けてきました。なぜなら、非常に長い間、私は中東の人間ではないと装っていたからです。9.11以降は私にとってとても、とても苦しい時代だったので、出自を隠し、両親との多くの特別なイベントを見過ごしてきました。そして今、その両親が私を見ている。そのことが信じられません。オリン・ウルフには感謝の言葉しかありません。ジョンとジョンの勇気にも感謝を。アラブ人とイスラエル人が仲良く過ごすという小規模な話を、これまでにないほど必要な時代に伝えてくれました。私は、自分の人種が舞台上に投影される日が来るなんて信じたことがなかった俳優の一人です。それでも私たちは今それをやってのけている。そしてそれだけではなく、中東の至る所にいる子供たちからメッセージが届いているのです。感謝と、我々が代表者としてステージに立つことがいかに彼らに影響を与え人生観を変えているのかを伝えるメッセージが。ですのでこのチーム全体に感謝したいです。素晴らしい曲を書いてくれたクローマーとヤズベック。イタマール、とても誇りに思ってます。キャストのみなさんも。今が私の人生の中で最もクレイジーな瞬間です。この場所に立つなんて考えたこともありませんでした。これを見ている全ての子どもたちに知ってもらいたいです、自分にとっての最大の障害物は後に自分の存在意義に変化し得るということを。本当にありがとうございます。 

 

デヴィッド・クローマー

『バンズ・ヴィジット/The Band's Visit』でミュージカル演出賞を受賞したデヴィッド・クローマーのスピーチは、授賞式直前に飛び込んできたケイト・スペードとアンソニー・ボーデインの悲報を受けたものになっていました。

One of the things that The Band's Visit concerns itself with is people who, due to loneliness, isolation, may have started to lose hope. And I wish that I had the words or the wisdom to say to the people out these whose despair is overwhelming their hope. I wish I had the way to convince them to continue looking to have the patients and courage to keep trying to find hope. I guess I would just say if you are suffering, please, please call out and, for those of us who are fortunate enough not to be suffering so deeply, let's make sure that we answer them. Thank you so much for this. Hi, Mom.

『バンズ・ヴィジット』が扱っているものの一つは、孤独や孤立感ゆえに希望を失い始めてしまう人々です。絶望感に希望が掻き消されてしまっている人々にかけられる言葉や知恵を私が持っていたら良いのですが。希望を探し続ける忍耐と勇気を持とうと納得させられる方法を持っていたら良いのですが。もしあなたが苦しみの中にいるのなら、お願いです、お願いですから、助けを求めてください。そして、深い苦しみにはまっていない幸福な境遇にある人々は、確実にその声に答えられるようにしましょう。どうもありがとうございます。やあ、母さん。

誰かの助けが必要だけど周りに相談できる人がいないと感じている方は、電話相談口を利用してみるのも一つの手かと思います。電話はハードル高いという方にはLINEやチャットで相談できるところもあるようですよ。

あと、レイチェル・ブルームとジョン・レグイザモは幕間で「セラピーは効果あるよ」と言っていました。

Rachel: Coming up, Bruce Springsteen...!? Honestly, I would say somebody pinch me, but, you know what? you know what? I don't need physical pain caused by another person to prove to myself that I'm happy. Thanks therapy.
レイチェル:次に登場するのは、ブルース・スプリングスティーン…!?正直「誰か私をつねって」って言いたいとこだけど、聞いて、いい?幸せだという気持ちを自分に証明してみせるために他の誰かから身体的な痛みを加えられる必要はないの。セラピーに感謝。

John: Therapy pays off.
ジョン:セラピーは効くよね。

Rachel: Therapy pays off.
レイチェル:セラピーは効く。

 

オリン・ウルフ

ミュージカル作品賞を取った『バンズ・ヴィジット/The Bands Visit』のリードプロデューサー、オリン・ウルフのスピーチ。

In The Band's Visit, music gives people hope, and makes borders disappear. Although the characters are strangers to each other with great political devides, our show offers a message of unity in a world that more and more seems bent on amplifying our differences. In the end we are all far more alike than different, and I am so proud to be a part of a community that chooses to support that message.

『バンズ・ヴィジット』では、音楽が人々に希望を与え国境を取り払います。登場人物たちはお互いに見ず知らずの他人で、政治的にも分断されていますが、違いを誇張しようとする世界の中で我々の作品が伝えるのは団結のメッセージです。結局のところ我々は相違点よりも共通点の方がはるかに多いのです。そしてそのメッセージを後押しすることを選ぶコミュニティーの一員でいられることを誇りに思います。

 

トニー・シャルーブ

『バンズ・ヴィジット/The Band's Visit』でミュージカル主演男優賞を受賞したトニー・シャルーブトニー賞は初受賞ながらも落ち着いていて貫禄を感じました。言葉選びが丁寧で繊細で、静かな中にも熱と知性が感じられる非常に大人のスピーチです。

Alright listen, it's late and I know you are all tired, so I'm gonna make this as long as I possibly can. If you'll indulge me, I want to connect this moment to a moment that occurred nearly a century ago, 1920, when my father arrived on a boat from Lebanon, and first stepped foot here on Ellis Island. He was then just a boy of 8. Disembarked on Ellis Island just a few short miles from this very spot. So tonight I celebrate him and those who, all those in his family who journeyed before him and with him and after him. And I feel that this extremely generous gesuture of yours honors, not only their aspirations, their courage, their resourcefulness and their creativity, and their selflessness. I thank the Theater Wing, and may we, their descendants, never lose sight of what they taught us. Thank you.

よし、聞いてください。もう夜遅くて皆さんがお疲れなのは知っています。なので私はできる限り長く喋ろうと思います。もしよろしければ、私はこの瞬間を一世紀近く前のある瞬間につなげたいと思います。1920年に、私の父はレバノンからボートに乗ってやってきて初めてここエリス島の地を踏みました。彼は当時まだ8歳の男の子で、まさにこの場所からたった数マイルの距離にあるエリス島に上陸したのです。ですので今夜は、彼と、彼の家族であり彼より先に渡航した者たち、彼と共に渡航した者たち、彼の後に渡航した者たち全員を祝します。あなた方によるこの極めて寛大な意思表示は、彼らの抱いていた大志だけでなく、彼らの持つ勇気や知恵、創造性、そして献身的姿勢をも称えているように感じます。シアター・ウィングに感謝します。そして、彼らの子孫である我々が、彼らの教えを見失わずにいられますように。ありがとうございます。 

 

ジョン・レグイザモ

最後に演劇リバイバル作品賞のプレゼンターを務めたジョン・レグイザモのスピーチの一部を。彼は今年トニー賞特別賞も受賞しています。

I didn't start out wanting to be an actor or a comedian, but when my math teacher said to me one day, "Mr. Lesqueezamo, you have the attention span of a sperm. If they can make penicillin out of moldy bread, they can make something out of you. So why don't you become a comedian? They get paid for being idiots."

私は俳優やコメディアンになりたいと最初から思っていたわけではありません。しかし、数学の先生がある日私に言ったのです。「レスクイーザモくん、君の集中力持続時間は精子ほどしかないね。だがカビの生えたパンからペニシリンが作れたならば君からも何かが見つかることだろう。コメディアンになってみたらどうだね?バカでいることでお金がもらえるぞ。」

I'm a living example of how theater can change you. And it didn't just change you, I mean, it saved me. Because theater teaches you how to understand other people. How to feel empathy for those who are not like us.

私は、演劇によりどれだけ人は変わり得るのかを示す生きた見本になっています。そして、演劇は人を変えるだけではありません。それは私を救ってくれました。演劇が他者を理解する方法を教えてくれ、自分たちとは異なる者たちに共感する方法を教えてくれたからです。

演劇作品賞にノミネートされたジョン・レグイザモの一人舞台『Latin History for Morons(直訳:バカ向けの中南米の歴史)』、めちゃくちゃ面白そ〜〜!タイトルだけで<勝ち>が約束されてるじゃん観たい〜〜〜!!と思ってたんですが、なんと、Netflixがやってくれました。『ジョン・レグイザモサルでもわかる中南米の歴史』という日本語タイトルで先日配信が開始され、現在全編視聴可能です。頭が上がらないわ。面白くてためになって泣けるので興味のある方はチェックしてみてください。こういった作品を地域差なく全世界同時配信してくれるNetflix有り難すぎるよ…。

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「舞台コミュニティーは多様性を尊重してくれる」という旨のスピーチがいくつかありましたが、本当にトニー賞アカデミー賞に比べてノミニーや受賞者の人種的偏りが(それほど)大きくないのが良いですね。プロデューサーや演出家や脚本家に女性が少ないなーというのはやっぱりちょっと感じてしまうけど…。

あっ、『アンブレイカブル・キミー・シュミット』のタイタス・バージェスがプレゼンターで出ていたのもとっても嬉しかったです。赤のタキシードがキマってた。キミーシュミットが完結したら彼をブロードウェイに出してくれ偉い人〜〜〜〜!