空が青くて涙が出るよ

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アトラクションの楽しさそのままに、人間ドラマも盛り込んで - 映画『ホーンテッドマンション』感想

数年ぶりにはてなブログを開いた。どこからログインすればいいのか分からず一瞬迷った。PCがパスワードを記憶しておいてくれて助かった。

ツイッターが悲惨な状況なので、映画の感想とかはまたブログに書くようにしようかなとは思いつつ、文章をまとめるのが億劫で実行できていなかったんですが、別にきれいにまとめる必要もないか、個人ブログだし……と開き直思い直したので、メモ帳に思うまま書き殴った雑感をほとんどそのまま移し書きすることにします。

というわけで、以下、映画『ホーンテッドマンション』(2023)の感想。ネタバレあり。

映画『ホーンテッドマンション』のパンプレットと、映画の感想が書かれた見開きのメモ帳が写った写真

・冒頭の、やさぐれたベンがツアーガイドやるシーンでもう泣いた。霊がいるなら会いたいよ、の気持ちが分かりすぎて。おばけが存在することに怯える人もいれば、おばけが存在しないことに絶望し苛立つ人もいる。パラノーマル系の話を全然信じてなさそうな科学者だったベンが「幽霊屋敷」を巡ってツアーガイドをやるに至った経緯と心情をこの短時間で観客に分からせるのすごい。

・最初に画面に映し出される出演キャストのクレジットを眺めていたらそこにDANIEL LEVYの名前があって、DANIEL LEVYってDAN LEVY!?『シッツ・クリーク 』の!?そんな事前情報どこにもなくなかった!??とびっくりして、いやいやプロデューサー側のクレジットだった可能性もあるし同姓同名の別人もありえるしな…と自分を落ち着かせていたら今度はHASAN MINHAJの名前が映って、ハサン・ミンハジ?!??!と更にびっくりした。ホーンテッドマンションの調査をするであろう、ポスターに載っている人たち以外に人間の出る余地があると思ってなかったから最初は半信半疑だったし、「出てる」と言っても数多くいるゴーストの一人とか、判別できるかできないか微妙なところでの配役じゃないの?と疑ってたけど、いやー人間として出てきた出てきた。面白かった。

・題材と予告編から、てっきりホーンテッドマンション内で物語が完結するワンシチュエーションものだと思い込んでいたけど、実際はそうではなくて、マンション(の住人)からは逃げられないけど、物理的にマンションの外に出ることは可能、という設定になっていて、それががすごく新鮮だったし面白かった。「屋敷から出られない」と「屋敷から出られるけど逃れられない」は同じようでいて全然違う。自由はないけど自由がある。

・ベンが屋敷を出てから屋敷に戻る(戻るしかなくなる)までの演出とか最初の方の演出が普通にホラー映画のそれでワクワクした。勝手に変わるテレビのチャンネル、見えないけど確かにそこに「いる」者、扉を開けたら別世界…等、妥協なしのホラー映画な始まり方だった。でも最後は陽気な歌とダンスで終わる。最高ーーーーー!!!

・『ディズニーパークの裏側〜進化し続けるアトラクション〜』のホーンテッドマンション回でも言ってたけど、ホラー(お化け屋敷)要素とコメディ要素がミックスされているのがこのアトラクションの良いところで、それがこの映画でも受け継がれていて上手くいっていた。怖くて笑える。不気味で笑える。どちらかだけではなく両方ある。それに加えて映画には人間ドラマ要素もある。

・おばけだって元は人間なので、(生者から見て)怖いものもいるしそうでないものもいる。怖い思いをしておばけになって(またはおばけになってから怖い思いをして)自分自身も怖い存在になった可能性もある。本作は、おばけだからといってその存在がもれなく恐ろしいわけではない、おばけイコール恐怖ではない、という描写で一貫していてすごく好き。私もそう思う。映画『パラノーマン』もそういう描写をしていたから好きだし、監督だとマイク・フラナガンもそういう描写をする人だから好き。

・笑えるシーンがとにかく多い。社交的でない人が主人公で、自宅が怪奇現象に襲われて慌てて外に逃げたら社交的な隣人に朗らかに挨拶されて「人間もムリ」と自宅に逃げ帰るのとか面白すぎた。好き。しかもこのシーンがあるからこそ後々の自己開示シーンがより生きてくる。すごい。

・キャスティングも良かった。ラキース・スタンフィールドはもちろんのこと、胡散臭いけど霊媒師としての能力はあって、でも自己肯定感は実は低いハリエット役のティファニー・ハディッシュや、ちょいちょいノリが軽い神父(ではない)だけど根の部分は真っ当で良い人なケント役のオーウェン・ウィルソンなどなど、それぞれが一面的ではないキャラクターを演じていてみんな役に合っていた。

・マイノリティのステレオタイプ描写が問題になるのは、ステレオタイプ的なキャラクターでしかマイノリティを登場させない場合である、というのがよく分かる映画でもある。ティファニー・ハディッシュの役柄は、主要キャラクターの内で彼女だけが黒人だった場合はすごくマジカル・○○○的で批判を免れないものであると思うが、今作では他に、主人公含め複数の黒人俳優が多彩な役で出ているから問題とは感じない。

主人公ではないキャラクターに(人種的)マイノリティが配役されることは多くなってきたが、主人公含めた複数人にマイノリティを配役するエンタメ大作はまだ多くない印象なので、こういうのが見たかったんだよなあ〜と感動した。やろうとすれば(意識さえすれば)できることなのよ。実写映画ではないけど、アニメーション映画では最近は『アクロス・ザ・スパイダーバース』と『マイ・エレメント』がそれをやっていて良かった。三作品とも監督が非白人。

・今作にはX-MENも(アクションフィギュアで)出てたけどさあ、ディズニー傘下でX-MEN映画を新しく作るなら人種比(と男女比)まじで考えて作ってほしい。意識しなかったら絶対に白人に偏るので。多様な人種と国籍の人々を集めてできたチームなはずのニュー・ミュータンツですら映画ではああなってしまったのだから……。監督の人選まじ頑張って……。