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空が青くて涙が出るよ

ブログタイトルはビートルズのBecauseという曲からです。深い意味はありません。

Natasha, Pierre and the Great Comet of 1812

正式なタイトルを最近やっと言えるようになりました。

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トニー賞まで一ヶ月を切りました。今年は何が取るんでしょうか。ほんの二ヶ月ほど前までは「作品賞なんて"Dear Evan Hansen"一択でしょ」とか思ってましたが、前回紹介した"Come From Away"も今回紹介する"Natasha, Pierre and the Great Comet of 1812"も、いざ調べてみたら本当に凄い作品で完全に惚れ込んでしまったのでもう私にはどれか一つを選んで優劣をつけることなんてできません。みんなちがって、みんないい。

...いやまあそんなこと言っても何が作品賞取るのかは気になりますけどね。どうなるんだろう。大衆人気だけだとDear Evan Hansenがかなり強い印象がありますが、アカデミー賞では大衆人気もあり批評家もまず間違いなく取ると予想していたララランドを破ってムーンライトが受賞しましたし何が起こるかなんて分かりません。楽しみ。

前置き長くなりましたが、今回は"Natasha, Pierre and the Great Comet of 1812"というミュージカルの話。邦訳すると「ナターシャ、ピエールと1812年の大彗星」かな?せっかく覚えたけど作品名長すぎるのでこれ以降はThe Great Cometと呼ばせて頂きます。


おおまかなこと

The Great Cometはトニー賞で今年最多の12部門ノミネートを果たしたミュージカル。人類に愛されたスーパースター、ジョシュ・グローバンがピエール役で出演しています。


こんな作品

このミュージカル、タイトルこそ長いものの内容はとっても親しみやすいんです。なんと言っても、みんな大好き&お馴染みのあの小説を基に作られていますからね。

その名も「戦争と平和」。トルストイ著。

 ...何してるんですか、ブラウザを閉じようとするその手を止めてください!確かに全4巻構成で日本語版総ページ数3000にも登る長編ロシア文学を題材にはしていますが、親しみやすいっていうのは本当です。決して「難しくて真面目で、つまんないと思ってもそれを素直に口に出したらエリートに嘲笑されるような作品」ではありません。安心してください。

親しみやすいポイントは大まかに言うと「音楽」と「劇場」にあると思います。まず音楽ですが、オペラはオペラでも古めかしくて眠くなるようなオペラではなく、「エレクトロポップ・オペラ」という新たなジャンルを創造しています。電子的な音が使われていたりしてすごく現代的で、カッコイイ。アルバムを流し聴いているだけでもワクワクして楽しいです。
初めて紹介映像を見たとき鳥肌立ちました。カッコイイ!

www.youtube.com

そして動画からも分かる通り、 音楽だけでなく劇場もこれまでにないような革新的な作りになっています。最近までレ・ミゼラブルを上演していたインペリアル・シアターはこのThe Great Cometのために大改装が行われ、ステージと観客席の隔たりが感じられない唯一無二の劇場へと変貌を遂げました。

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これがその劇場内部の様子。いや...ステージどこよ......

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座席表。劇場内部丸ごと使って19世紀ロシアのサロンを再現していて、一般客でもステージ上にあるテーブル席やカウンター席なんかにも座ることができるので、自分も作品の一部に組み込まれているという感覚が得られます。横並びのいわゆる「普通」の座席もありますが、キャストたちは縦横無尽に駆け回って劇場全体をステージにするので「どの席も最高の席」なんだそう。席によって視点が変わるのでリピーターにならざるを得ない構造ですね。憎い。


"Prologue" という曲

紹介映像の前半で流れていた曲がこのミュージカルの一曲目で、曲名はそのまま「プロローグ」。この曲がすごく良くできていて、大量にいる登場人物を一言紹介と共に歌にして何度も何度も繰り返すことで頭に刷り込ませるという完璧な導入歌になっています。しかも楽しくキャラクターを覚えられるだけでなく今後の展開も予想させる作りになっているという。

公園のイベントで行ったパフォーマンス。おそらくオフ・ブロードウェイ時のキャスト。
www.youtube.com

こちらはテレビ番組でのパフォーマンス。ブロードウェイキャスト。2曲歌うのでプロローグの方はだいぶ省略されちゃってますが、衣装着て楽器弾いて動き回るので劇の雰囲気が掴みやすいです。スーパースターのジョシュ・グローバンも歌っております。カッコイイ。
www.youtube.com

歌詞と和訳

[PIERRE]
There's a war going on out there somewhere
And Andrey isn't here (×2)

外のどこかでは戦争が起こっていて
アンドレイはここにはいない (×2)

[ALL]
There's a war going on out there somewhere
And Andrey isn't here (×2)
外のどこかでは戦争が起こっていて
アンドレイはここにはいない (×2)

And this is all in your program
全部プログラムに書かれてる
You are at the opera
オペラにいるんだ
You're gonna have to study up a little bit
少しは予習しなきゃいけない
If you wanna keep with the plot
話についていきたいならね
'Cause it’s a complicated Russian novel
なぜならこれは複雑なロシア文学
Everyone’s got nine different names
誰もが9つも名前を持っている
So look it up in your program
だからプログラムで勉強して
We'd appreciate it, thanks a lot
助かるよ  感謝する
Da da da da da da da da da

Natasha!
ナターシャ!

[NATASHA]
Natasha is young
ナターシャは若い
She loves Andrey with all her heart
彼女はアンドレイを心から愛してる

[ALL]
She loves Andrey with all her heart
彼女はアンドレイを心から愛してる
Natasha's young
ナターシャは若い
And Andrey isn't here
そしてアンドレイはここにはいない
 
[SONYA]
Sonya is good

ソーニャは善人
Natasha's cousin and closest friend
ナターシャのいとこで親友

[ALL]
Natasha’s cousin and closest friend
ナターシャのいとこで親友

Sonya's good
ソーニャは善人

Natasha's young
ナターシャは若い

And Andrey isn’t here
そしてアンドレイはここにはいない

[MARYA]
Marya is oldschool
マリヤは古風
A grande dame of Moscow
モスクワの貴婦人
Natasha's godmother, strict yet kind
ナターシャの名付け親で厳しくも優しい

[ALL]
Natasha's godmother, strict yet kind
ナターシャの名付け親で厳しくも優しい
Marya's oldschool
マリヤは古風
Sonya's good

ソーニャは善人
Natasha's young
ナターシャは若い
And Andrey isn't here
そしてアンドレイはここにはいない

And this is all in your program
全部プログラムに書かれてる
You are at the opera
オペラにいるんだ
You're gonna have to study up a little bit
少しは予習しなきゃいけない
If you wanna keep with the plot
話についていきたいならね
'Cause it’s a complicated Russian novel
なぜならこれは複雑なロシア文学
Everyone’s got nine different names
誰もが9つも名前を持っている
So look it up in your program
だからプログラムで勉強して
We'd appreciate it, thanks a lot
助かるよ  感謝する
Da da da da da da da da da

Anatole!
アナトール!

[ANATOLE]
Anatole is hot
アナトールはセクシー
He spends his money on women and wine
彼は女性たちとワインにお金をつぎ込む

[ALL]
He spends his money on women and wine
彼は女性たちとワインにお金をつぎ込む
Anatole is hot
アナトールはセクシー
Marya's oldschool
マリヤは古風
Sonya's good

ソーニャは善人
Natasha's young
ナターシャは若い

And Andrey isn't here
そしてアンドレイはここにはいない

[HÉLÈNE]
Hélène is a slut
エレンは尻軽
Anatole's sister, married to Pierre
アナトールの姉でピエールの妻

[ALL]
Anatole's sister, married to Pierre
アナトールの姉でピエールの妻
Hélène is a slut
エレンは尻軽
Anatole is hot
アナトールはセクシー
Marya's oldschool
マリヤは古風
Sonya's good
ソーニャは善人
Natasha is young
ナターシャは若い
And Andrey isn't here
そしてアンドレイはここにはいない

[DOLOKHOV]
Dolokhov is fierce, but not too important
ドーロホフは獰猛  でもそこまで重要じゃない
Anatole's friend, a crazy good shot
アナトールの友人でイカれた射撃の名人

[ALL]
Anatole's friend, a crazy good shot
アナトールの友人でイカれた射撃の名人
Dolokhov is fierce
ドーロホフは獰猛
Hélène is a slut
エレンは尻軽
Anatole is hot
アナトールはセクシー
Marya's oldschool
マリヤは古風
Sonya's good
ソーニャは善人
Natasha's young
ナターシャは若い
And Andrey isn't here
そしてアンドレイはここにはいない

Chandeliers and caviar, the war can't touch us here
シャンデリアにキャビア  戦争はここの私たちに手を出せない

Minor characters!
脇役たち!

[BOLKONSKY]
Old Prince Bolkonski is crazy
老いたボルコンスキー王は変人

[MARY]
And Mary is plain
メアリーは地味

[MARY & BOLKONSKY]
Andrey's family
アンドレイの家族
Totally messed up
ひどい状態

[BALAGA]
And Balaga's just for fun!
そしてバラガはただ愉快

[ALL]
Balaga's just for fun!
バラガはただ愉快
Balaga is fun
バラガは愉快
Bolkonski is crazy
ボルコンスキーは変人
Mary is plain
メアリーは地味
Dolokhov is fierce
ドーロホフは獰猛
Hélène is a slut
エレンは尻軽
Anatole is hot
アナトールはセクシー
Marya's oldschool
マリヤは古風
Sonya's good
ソーニャは善人
Natasha's young
ナターシャは若い
And Andrey isn't here
そしてアンドレイはここにはいない

What about Pierre?
ではピエールは?
Dear, bewildered and awkward Pierre?
親愛なる  途方にくれてて不器用なピエールは?
What about Pierre?
ピエールは?
Rich, unhappily-married Pierre?
金持ちで不幸な結婚をしたピエールは?
What about Pierre?
What about Pierre?
What about Pierre?

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この曲で畳み掛けるように歌われる「ナターシャは若くて(婚約者の)アンドレイはここにはいない」というフレーズからも想像できるように、この物語の一つの軸は「ナターシャの不倫」です。せ、世俗的...!

若いナターシャはモスクワでアナトールという男に出会い、魅了され、アンドレイへの想いに疑問を抱くようになります。このアナトールという男がまたいいキャラクターしてるんですよ、、。彼は快楽主義者で、既婚でありながらもナターシャを誘惑する「悪人」ではあるんですが、なんせイケメンで、セクシーで、自信家で迷いがなく、いい声で甘い言葉を囁き、バイオリンを弾きますからね。ものすごくカジュアルに。そんなんモテますわ〜〜〜!

緑のコートを着ているのがアナトール。カッコイイ。
www.youtube.com

ここで披露してるのは"Balaga"という曲ですが、アナトールのねっとりした口説きを聴くなら再生すべきは"The Ball"と"Letters"ですよ奥さん!

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最後にナターシャを演じているデネー・ベントンさんのインタビューから抜粋。

アフリカ系アメリカ人でありながら1812年のロシア人貴族を演じることにどんな意味があると感じているかという質問に対して)

(3:39~)ある時ティーンエイジャーで黒人の女の子が劇を観に来ていて、振付師に私のパフォーマンスについて話していたことがあったの。彼女は「6才の妹を絶対連れて来てこのショーを見せてあげなきゃ。デネーがステージ上ではプリンセスだった。私たちでもプリンセスになれるなんて知らなかった。」って言ってて。それがどんな気持ちか私も覚えてるからただ涙が出ちゃった。アーティストやエンターテインメントに携わる人間は素晴らしい力を持っていて、人々に自分の価値を思い出させて大きな夢を見る手助けをすることできる。その一員になれたことにとてもワクワクしてるの。

www.youtube.com 

 

...あれ、こんだけ書いといてピエールの話全然してなくない?

Natasha Pierre & The Great Comet of 1812

Natasha Pierre & The Great Comet of 1812

 

"Natasha, Pierre and the Great Comet of 1812"公式サイト