空が青くて涙が出るよ

映画やミュージカルやテレビドラマの話などをします。

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』小ネタとか(ネタバレあり)

毎回思うんですけど邦題ダサすぎない?

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現在絶賛公開中の映画『IT』から、一回観ただけでは気づかなかった小ネタや、印象的な台詞、原作へのオマージュシーンなんかを書いていこうと思います。ネタバレ全開なので映画をまだ観てなくて観る予定のある方は絶対読まない方がいいです。途中から原作のネタバレも普通にするのでお気を付けください。


<厳選!今日から使える英語フレーズ>

ホラーでありながら笑える台詞がてんこ盛りな上に泣ける台詞もはさんできた映画『IT』、数々の名台詞の中から特に印象に残ったものをいくつか挙げていきます。日常で使える機会があったら使っていきましょう。

まず最初は、ネットで見て意味を理解した後に笑いすぎて涙を流したこのフレーズ。エディの言葉です。

They're gazebos! They're bullshit!

〜ことの流れ〜
いつもの薬の補充のため薬局へ行ったエディは、薬局屋の娘のグレタに「知ってる?あんたの薬、placebo(プラシーボ、偽薬)だよ。あんた騙されてるよ。」と言われます。しかしplaceboという単語の意味が分からないエディは聞き返し、グレタは「プラシーボは嘘っぱちってこと(Placebo means bullshit)」と答えます。

自分の薬が偽物だったと知り怒りを爆発させるエディ。母親に詰め寄り薬局で知ったことをぶちまけますが、覚えたての単語を使おうとして失敗します。

You know what these are? They're gazebos! They're bullshit!
これが何か分かる?ガジーボだよ!嘘っぱちなんだ!

※ gazebo(ガジーボ): [名]見晴らし台、展望台、あずまや

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こんな面白いこと言ってるなんて全然気づきませんでしたよ!?!??(逆ギレ)
すごくシリアスな良いシーンなのにめっちゃ笑える...というかすごくシリアスな良いシーンだからこそめっちゃ笑える...み...見晴らし台って...無理...

お母さんも薬の容器見せられながら突然「They're gazebos!(見晴らし台なんでしょ!)」なんて言われた時は正直「????」って感じだっただろうなとか思うともう...面白すぎる...最高...

「そんなのbullshit(嘘っぱち、でたらめ)だ!」と感じるようなことがあったら積極的に使っていきたいですね、「They're gazebos!」

 

次。これも最初に見た時は全く気づかなかったんですが、分かるととってもかわいらしく思えるシーン。(台詞とは関係ないんですがこの場面、スタンの右肩あたりの壁に隠れペニーワイズが描かれています)

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Are you sure they got the right stuff...to fix you up?
本当に必要なものは揃ってる?...あなたを治すのに。

これは、ベンの傷をどうにかしようとするビルたちに合流したベバリーがベンにかけた言葉。うっかり見逃しそうなんですがここでベバリーはベンにウインクをしています。私は「また会ったね」くらいの意味なのかなと思ってそんなに気にしていなかったんですが、そこにはもっと粋な遊び心が込められていたようです。というのも、ベバリーの台詞「They got the right stuff」は、ベンが(部屋にポスターを貼るほど)大好きなニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックの曲"You Got It (The Right Stuff)"に掛けられているもの。最初に出会った時にベンがヘッドホンで聴いていたのもこの"You Got It (The Right Stuff)"という曲だったみたいです。ベバリーとベン(とニューキッズオンザブロックをよく知っている観客)だけが分かる内輪ネタですね。この台詞の後にベンの見せる恥ずかしさと嬉しさの混ざった感じの照れた表情がとってもかわいらしい。

New Kids On The Block - You Got It (The Right Stuff)
www.youtube.com


Hi-yo Silver, AWAY!

原作で繰り返し使われるフレーズが散りばめられていたのも楽しかったです。「Hi-yo Silver, AWAY!」は原作でビルが自転車に乗る度言ってるんじゃないかと思うくらい言う台詞。元ネタは『ローン・レンジャー』らしいですね。映画ではベンが図書館から窓の外を覗いた時にビルたち4人が自転車で走っていき、ビルがこの台詞を叫んでいます。今回の映画ではたいして活躍しませんでしたが、ビルの愛車シルバーは原作ではエディ、リッチー、ビルの命を救います。


Beep beep, Richie!

リッチーが喋りすぎているときやジョークがいきすぎている時に使われるフレーズ。警告音みたいな。映画ではみんなストレートに「黙れよ、リッチー(Shut up, Richie)」と言っていて、この台詞を口にしたのはペニーワイズだけでした(棺桶から飛び出すところ)。仲間内のネタをペニーワイズみたいな存在に使われるのって怖すぎでしょ。


Eds

「Eds(エズ)」は、リッチーがエディにつけたあだ名。原作にはエディによるこんな回想が入ってます。

Man, he had hated it when Richie called him Eds...but he had sort of liked it, too.(中略)It was something... like a secret name. A secret identity. A way to be people that had nothing to do with their parents' fears, hopes, constant demands. Richie couldn't do his beloved Voices for shit, but maybe he did know how important it was for creeps like them to sometimes be different people.
ああ、彼はリッチーが彼のことをエズと呼ぶのが嫌いだった...しかしどこかでそれを気に入ってもいた。(中略)それは何か大切なものだった...隠れた名前のような。隠れた姿であり、親からの恐怖や期待、絶え間ない要求とは無関係でいられる人間になる方法だった。リッチーは大好きな声真似は全く上手くできなかったが、彼らのような変わり者たちにとって、時に自分以外の人間になることがどれほど大事かを理解していたのかもしれない。

ほんのり寂しくてほんのり温かくてほんのり懐かしい感じがするこの文章すごく好きなんですが、このEdsというニックネームも映画内で最初に口にするのはおそらくペニーワイズです(エディとペニーワイズが初めて会うシーン)。いい意味だとしても悪い意味だとしてもエディにとっては思い入れのあるこのあだ名で親しげに呼びかけてくるペニーワイズ、ゾッとする。


 I ♡ DERRY

ヘンリー一味の一人パトリックがベンを追って下水道に入り込み、逆にペニーワイズに追い詰められてしまうシーン。最後に彼は赤い風船が浮かんでくるのを目にし、その風船には「I ♡ DERRY」の文字がプリントされているのが見えます。

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「I ♡ DERRY」は原作の最初20ページ目くらいで出てくるキャラクター、エイドリアン・メロンの話に関連する言葉。エイドリアン・メロンは別の町からデリーにやって来たゲイ男性で、デリーのお祭りで手に入れた「I ♡ DERRY!」の文字が書かれていて花が飾られている帽子を誇らしげに被って恋人と歩いていたところをティーンエイジャーの少年三人に目をつけられ、リンチにあいます(のちに少年の一人は「エイドリアンがその帽子を被っていたことで“市民としての誇り”が傷つけられた」と供述する)。エイドリアンは橋の下に投げ出されたものの、その時点では生きていました。しかしそこにペニーワイズが現れ、彼はペニーワイズの犠牲になってしまいます。その時エイドリアンの恋人ドンが見た光景がこんなもの。

      'Float with us, Don,' the clown said out of its grinning red mouth, and then pointed with one of its white-gloved hands under the bridge.
      Balloons floated against the underside of the bridge - not a dozen or dozen dozens but thousands, red and blue and green and yellow, and printed on the side of each was I ♡ DERRY!
      「一緒に浮かぼう、ドン」ピエロはニヤついた赤い口でそう言い、白い手袋をつけた手の片方で橋の下を指さした。
      橋の裏側にはいくつもの風船が浮かび上がっていた ー 十数個や二十数個などではなく何千もの、赤や青や緑や黄色の風船が。そして一つ一つ側面には文字がプリントがされていた、I ♡ DERRY!と。

I started after him...and the clown looked back. I saw its eyes, and all at once I understand who it was.'
      'Who was it, Don?' Harold Gardener asked softly.
      'It was Derry,' Don Hagarty said. 'It was this town.' 
僕は彼を追いかけた...するとピエロがこちらを振り返った。僕はその目を見て、突然それが誰なのか理解したんだ。」
      「誰だったんだ、ドン?」ハロルド・ガードナーはそっと尋ねた。
      「デリーだった」ドン・ハガティーは言った。「奴はこの町だったんだ。」

この一連のエピソード、すごくよくできていて読んでいてつらくなります。デリーで社会的弱者としてずっと暮らしてきたドンはこの町の持つ悪意を感じ取り町に対して恐怖を感じてきたけど、外から来たエイドリアンにはその恐怖を十分に理解してもらえず、また、社会的強者である男性警官たちはデリーで生まれ育ったにも関わらずそんな悪意に気づきもしなかったという話とか、現実的すぎて怖い。

 

<その他の小ネタとか>

ペニーワイズの目の色

ジョージーとペニーワイズが出会うシーン、ペニーワイズの目の色は最初黄色だったのがジョージーに話しかける頃には青色になり、ジョージーを襲おうとする時にはまた黄色に戻ります。この目の色の変化は原作にも描かれていて、ジョージーはペニーワイズの明るい青い目を見て「お母さんやビルと同じ色の目だ」という印象を受けたことが分かります。


シナゴーグでトーラー朗読の練習をしてる際、スタンリーは本を上下逆に開いています(ヘブライ語は右から左に読むから本を閉じたとき表紙は右側にくるのが正しい)。スタンリーの興味とやる気のなさの表れなのか、ただ単に映画製作者側のミスなのか...


ゴスペル

エディが一人で歩いているとき、ニーボルト・ストリートの角にある建物から歌声が聞こえてきます。この建物はおそらく原作にも出てくる教会付属学校。原作でエディは土曜に一人の時、この建物の外で本を読むふりをしながらゴスペルを聴いて楽しんでいるという記述があります。


ステージ上のピエロ

リッチーが怖いものは何かと聞かれ、「ピエロ...」と答える場面でステージ上にいたピエロも、ペニーワイズ役のビル・スカルスガルドが演じているそう。周りの子どもたちがそのピエロを全く気にかけてない様子や、そのピエロがまっすぐリッチーの方を向いている様子から、あれは人間ではなくペニーワイズだったのかも...


狼男とミイラ

原作では、リッチーが恐怖を感じているものはピエロではなく狼男。映画では指先だけゲスト出演しています。
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また、原作でベンが恐怖を感じているものは首のない焼死体ではなくミイラ。映画ではルーザーズクラブとペニーワイズとの最後の戦いで少しだけ顔を出します。


グループを離れる順番

血の約束を交わした後、最初にグループを去るのはスタンリーで、次はエディ。意図的ですよね...つらい...

 

<気になったこと>

・マイクもはや別人では...?両親が死んだことにされてるのもびっくりしましたが、マイクの「デリーの歴史に詳しくて仲間にそれを教える」という大きな役割を丸々ベンにあげちゃったのはどうなの...?ベンがデリーに残るわけじゃないでしょ...?次どうするんだろ...

最後の約束の場面、他の子たちはたぶん右利きだからそんなに支障なさそうだけどベバリーは左利きだったから問答無用で左手のひらに傷つけられるのちょっとかわいそうだなと思ったり。結構ざっくりいったよね!?

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Spotifyには「映画内の子供たちが1989年当時自分でプレイリストを作ったらこんな感じだっただろうな」プレイリストが公式で作られていたりします。ビルのプレイリストがいい感じに暗くて好き。

あとアンディ・ムスキエティ監督のインスタが超楽しいです。素敵なオフショットがいっぱいあるし、監督めっちゃ絵うまい。歌もピアノもうまい...なんなん...

 

I will not draw on the desk . I will not draw on the desk . I will not draw on the... i will ...not ....draw...... oh dammit

Andy Muschiettiさん(@andy_muschietti)がシェアした投稿 -

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11/25追記:
汚い言葉だらけなのでリッチーの面白い台詞全部割愛しちゃってたんですが、やっぱり書いておきたいので書いておくと、彼の台詞の中では「Welcome to the Losers' Club, asshole!」が断トツで一番好きです。アツすぎる。
次点で「Go blow your dad, you mullet wearing asshole!」(ジェスチャー付き)。

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『IT』原作。映画以上にアツい部分もたくさんあるので読んだことない方はこれを機に読んでみるのもいいんじゃないかなと思います。来たる続編の予習のためにも。

IT〈1〉 (文春文庫)

IT〈1〉 (文春文庫)

 
It

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