空が青くて涙が出るよ

映画やミュージカルやテレビドラマの話などをします。

"Another Day of Sun" - ラ・ラ・ランド

あのララランドの話ですよ。人気にあやかりたい。

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映画の感想とか詳しい分析とかはできませんやりません。他の見識ある頭いい人たちがたくさん書かれてると思うのでそちらをご覧ください。

今回は焦点を絞って、あの一瞬で心を奪っていったオープニング曲"Another Day of Sun"という曲についてちょっと考えていきたいなと思ってます。

だって、正直、このシーン観てるとき、字幕、読めてましたか?

私は全く追えてなかったです。「全部耳で理解できたから平気」とか言いたいですがそんなこともなく、「ダンスも観たいし原音で音としても聴きたいし歌詞の意味も全部知りたい」って考えがぐるぐる頭を回るだけで結局どれも完遂できないまま曲と映像の圧倒的パワーの前にテンションだけやたら上がっていく状態でした。字幕ほぼ追えてないにも関わらずテンション上がりすぎて曲終わった後思わず拍手しそうになりましたからね。(まだ一回しか観てないので確かじゃないですが、拍手待ちの「間」が意図的に用意されてた気がするんですけど気のせいですかね。舞台っぽいなーと思った記憶がうっすらあります。)

字幕を捨てようと思わせるほど映像から目が離せない理由の一つはやっぱり長回しにあるんじゃないかなと思いました。実際は3カットを繋いでるらしいですが、切れ目がわからなくて映像がプツッと途切れることがないから、よりリアルな人間の質感が伝わってきて、劇場にいるのかと錯覚するほどでした。

あの映像だけでも十分満足なんですけど、やっぱり歌があるからには歌詞は知っておきたい。Geniusという歌詞サイトでの分析を参考にしながら"Another Day of Sun"の歌詞を見ていこうと思います。普通にネタバレするのでよろしくお願いします。


とりあえず歌詞と和訳
(和訳間違ってる可能性あるので個人で訳してお楽しみください)

[First Girl]
I think about that day
あの日のこと考えてる
I left him at a Greyhound station
彼をグレイハウンドの駅に置き去りにした
West of Santa Fé
サンタフェ西部の

We were seventeen, but he was sweet and it was true
私たちは17歳だったけど、彼は優しくて愛は本物だった
Still I did what I had to do
それでも行かなきゃいけなかった
'Cause I just knew
だってわかってたから

Summer: Sunday nights
夏:日曜日の夜
We'd sink into our seats
座席に身を沈める私たち
Right as they dimmed out all the lights
全部の明かりが弱められたとき
A Technicolor world made out of music and machine
音楽と機械でできたテクニカラーの世界が
It called me to be on that screen
私をスクリーンへ誘って
And live inside each scene
この世界で生きるように言うの

[First Girl & First Man]
Without a nickel to my name
無一文だけど
Hopped a bus, here I came
バスに飛び乗ってここまで来た
Could be brave or just insane
勇敢だったのか正気じゃなかったのか

[First Girl, First Man & Second Man]
We'll have to see
成り行きを見守るしかない

[First Girl]
'Cause maybe in that sleepy town
だってきっとあの退屈な街で
He'll sit one day, the lights are down
いつか彼が座席について、明かりが落とされる
He'll see my face and think of how he...
彼は私の顔を目にするの、そして思いを巡らすでしょう

[First Girl, First Man, Second Man & Dancers]
...used to know me
彼の知ってた私の姿に

[All] (Chorus)
Climb these hills
丘を登って
I'm reaching for the heights
私は高みに手を伸ばす
And chasing all the lights that shine
輝く光を追い求めてる
And when they let you down
落ち込まされたとしても
You'll get up off the ground
きっとまた立ち上がれる
'Cause morning rolls around
だってまた朝が巡って来て
And it's another day of sun
輝く日がやってくる

[Young Man]
I hear 'em ev'ry day
いつも耳にする
The rhythms in the canyons
峡谷のリズム
That'll never fade away
薄れることはない
The ballads in the barrooms
バーからのバラード
Left by those who came before
先人たちが残したもの
They say "you gotta want it more"
それらは言うんだ「もっと求めなくちゃ」って
So I bang on ev'ry door
だからあらゆるドアをたたいてく

[Second Girl]
And even when the answer's "no"
もらった答えが「ノー」だとしても
Or when my money's running low
お金が底を尽きそうだとしても
The dusty mic and neon glow
埃をかぶったマイクとネオンの光
Are all I need
それだけがあればいい

[Young Man]
And someday as I sing my song
いつか自分の歌を歌う日には
A small-town kid'll come along
田舎町の子どもが聴きにやって来る

[Second Girl & Young Man]
That'll be the thing to push him on and go go
その歌が背中を押してどこまでも前進させるんだ

[All] (Chorus)

[First Girl]
And when they let you down
落ち込まされても
The morning rolls around
また朝が巡ってくる

[All]
It's another day of sun
新しい輝く日がやってくる
It's another day of sun
It's another day of sun
It's another day of sun
Just another day of sun
It's another day of sun
Another day has just begun
新しい日がたった今始まった
It's another day of sun

It's another day of sun

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まず思ったのは、曲調は一貫して明るいのにどことなく寂しさというか、虚無感が感じられること。むしろ全体を通して明るくキラキラした曲調を貫いているからこその虚しさと言っても良いかもしれません。

作曲を担当したジャスティン・ハーウィッツはTIME誌にこう語っています。

The opening number is a perfect example of that dichotomy, because on the face of it it’s a very exciting, happy song, but there’s a lot of melancholy in it as well.
オープニング曲はまさに二項対立の良い例だよ。だって表面的にはとてもワクワクするハッピーな曲なのに、同時に多くのもの悲しさも内包しているんだ。

続けて引用。文中のポールとは作詞担当のジャスティン・ポールのことです。

"What Damien inspired us to capture was that there’s this difference between L.A. and New York," Paul explained. "In New York, you grind and grind to pursue your dreams and accomplish what you’re hoping to accomplish, and you get up the next day and it’s muddy and gross and the snow is just turned to black ice."
"デミアン(監督)が僕らにとらえさせたのはロサンゼルスとニューヨークの違いなんだ。"ポールは説明する。"ニューヨークでは、身を粉にして夢を追いかけ成し遂げたいことを成し遂げようとする。それで次の日起きたら外は泥だらけで汚くて、雪は薄氷に変わってるんだ。"

Meanwhile, L.A. may also be a constant struggle, but it’s also constant blue skies. “You pursue that dream, and you go to bed and get up the next day, and it’s a gorgeous day," Paul says. "It encourages you in one breath, and in another breath doesn’t acknowledge that you just failed miserably. You wake up and it doesn’t match your mood. It’s a bright and shiny day. And you’re like, 'Wait a second!”
一方で、ロサンゼルスでも絶え間ない奮闘があるだろうが、同時に青空も絶えず続く。"夢を追いかけ、眠りについて翌日起きたら素晴らしく天気のいい日が待ってるんだ。"ポールは言う。"それは一息に君を勇気付けることもある反面、無残に失敗した君のことなんてお構いなしだ。朝起きた時の天気が自分の気分と一致してないんだ。輝くような晴れた天気を見て「ちょっと待てよ!」ってなる。"

雨の降らない街として有名なロサンゼルス。劇中でミアも言っていたように、そこには素晴らしい可能性がいっぱいあるのに、オーディションではくだらない理由で邪魔をされるわ受けに来てる子は全く同じ格好してる上に自分より美人で才能があるわで挑戦すればするほど心が折れる現実があります。それでも次の日になると太陽が輝き、青空が広がっている。そして再び自分も輝く光(the lights that shine)を求めていつ終わるかもわからない挑戦を始める。どれだけ拒絶されて惨めな気分になってもお金が底をつきそうでも、そんなもの関係なく朝起きればまた別の輝かしい一日が始まっている...。
...気が狂いそう。
でもこんな観客の気持ちも置いてきぼりにするように、この曲は最後まで明るく希望に満ちた曲調を貫き通します。ロサンゼルスの青空が夢追い人の気持ちを置いてきぼりにし輝き続けるように。

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映画観てから気づけたこと。この曲には主役の二人どちらも出て来ませんが、この曲の歌詞は伏線としての機能も果たしていたんですね。最初の女性は自分の物語として「憧れ続けた夢のためにサンタフェに愛する恋人を置いて来た、いつかスクリーンで私を見てかつての私を思い出すでしょう」と語り、これは後のミアの物語に重なります。

ちなみに、サンタフェはロサンゼルスから約850マイルの距離に位置するニューメキシコ州の都市で、ネイティブ・アメリカンの伝統的な文化が今でも色濃く残っている特殊な街みたいです。レントの歌にも出てきますよね。サンタフェからアルバカーキニューメキシコ州最大の都市)までは車で1時間の距離です。
・・・そしてアルバカーキと言えば??
そうです。ブレイキング・バッドです。よろしくお願いします。

www.breakingbad.jp

話が逸れました。外から見るととっても魅力的で観光に訪れてみたいと思わせるようなサンタフェですが、そこで育ち大都会でスターになることを夢見た女の子の目にはただの活気のない街(sleepy town)に映るんでしょうね。

これも余談ですが、二文目にあるグレイハウンドというのはアメリカで100年以上続いている格安長距離バス会社のこと。貧乏な人たちに優しいです。さっき調べたらサンタフェからロサンゼルスまでは片道18時間で31〜55ドルくらいでした。やっすい。サンタフェからロサンゼルスまでは、だいたい青森から広島までと同じくらいの距離です。たぶん。

最初のサビが終わった後にソロを歌うのは、音楽に傾倒している男性。おそらく音楽の中でも特にジャズでしょう、セブのように。ジャズへの無関心/嫌悪という現実を突きつけられながらも過去の「偉人」と呼ばれるような人たちが作り上げた音楽に背中を押され、あらゆるドアを叩いてチャンスを掴もうとします。

いつか自分がパフォーマンスする側になって「田舎町の子ども」が来てくれたなら最高だ、みたいな歌詞には、劇中のミアが思い起こされます。 ワーナーブラザーズスタジオのカフェで働いていた時のミアはまだ大女優に憧れる「田舎町の子ども」でしたが、のちに自分が「大女優」側に立ち、かつてそこで見た憧れの女優の言動をそのままなぞります。もしかしたらその時対応した店員はミアに憧れてロサンゼルスに出て来たのかもしれません。そして彼女もまた夢を叶えて新たな「アイコン」になろうと奮闘しているのかも。一つだけ言えるのは、彼女の夢が叶っても叶わなくてもロサンゼルスには変わらず太陽が昇り、輝くような一日が訪れるということ。

 

そんな感じでした。いい曲だ〜〜〜〜! 

 

Ost: La La Land

Ost: La La Land

 

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