2017年に観た新作映画ベスト10
きっとこれが2017年最後のエントリーになるので、最後らしく今年観た映画を振り返って順位なんかつけてみちゃおうかなと思います。
観たかった、観ようとしてたのに結局観なかった映画もいっぱいあるけど...ダンケルクとかマンチェスター・バイ・ザ・シーとかスイス・アーミー・マンとかブレードランナー2049とか...他にもいろいろ...
特にマンチェスター・バイ・ザ・シーなんて公開前の何の情報も入れてない状態のときはもう観る気満々だったんですが、ケイシー・アフレックのアカデミー賞受賞にドン引きしすぎて日本公開までにどんどん気分が削がれていって結局いまだに観られてないです。映画自体はすごく面白そうだから観たいけどケイシーアフレックの顔を見続けなきゃいけないのは絶対にキツい...クリストファープラマーで再撮影してくれ...
まあそんな感じで観てない作品はたくさんありますし、映画として良かった順というよりは個人的に思い入れのある順でベスト10を決めてみたので、あまり当てにはせず「こういう人間もいるのね」くらいの気持ちで見ていただければ幸いです。
※公開日は全て日本での公開日です
10. ラ・ラ・ランド
"Here's to the ones who dream"
「夢見る人々に乾杯」
公開日:2/24
鑑賞日:2/25
ララランドはやっぱり初めて観たときのインパクトが半端なかったです。この時期にどハマりしていたディア・エヴァン・ハンセン(Dear Evan Hansen)の作詞作曲チームが歌詞を書いてるミュージカル、というだけで「観るっきゃない!」状態になり人生で初めてムビチケなるものを買ったほど楽しみにはしてたんですが、予告がこてっこての白人男女のラブストーリーっぽかったから心の奥では不安な気持ちも結構あったりして、「乗り切れなかったらどうしよう...」と思いながら観に行ったのを覚えています。その予告がミスリードを誘うものだったと全て理解したときにボロボロ泣きながら「騙してくれてありがとう」と思った記憶もあります。
ミュージカルにしては歌は少なめでしたが、一つ一つの歌の完成度がすごく高いのでそんなに気にならなかったり。オープニング曲に感激してこんな記事を書いたりもしました。
最初にララランドの人気にあやかりたいなんて書いてますが、実際に当ブログのアクセス数の80%くらいはこの記事に依存してるといっても過言ではないのでそういう意味でも忘れ難い存在でした。センキュー、ララランド!
"I'm one with the Force, and the Force is with me."
「我はフォースと共にある者、フォースは我と共にある。」
公開日:12/16(2016年)
鑑賞日:1/1
「えっ、スターウォーズ本編より数倍面白くない?」というのが鑑賞後の正直な気持ちです。スターウォーズのヘヴィなファンではないこととスピンオフ作品に全く期待していなかったことも関係しているかもしれませんが...。この映画で「ドニーさん」を初めて認識しそのカッコ良さに震えたのも懐かしい思い出です。既に何万回も話題にされすぎて宇宙の真理になってる頃かもしれませんが、ベイズに「Good luck!(幸運を!)」言われたチアルートが「I don't need luck. I have you!(運はいらない。俺にはお前がいる!)」て返すのアツすぎない???言ってみたいし言われてみたいわ!心肺停止だわ!
あとこれはスターウォーズシリーズ全体にも言えることですが、コスチュームが超カッコいいっす!無理がなくていちいちカッコいい!たまらん!
8. ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス
"I'm Mary Poppins, y'all!"
「俺はメリー・ポピンズだぜ、おめえら!」
公開日:5/12
鑑賞日:5/13
前作で跳ね上げた期待を軽々飛び越えてきて感動しました。ガーディアンズの決死の戦闘そっちのけでよちよち踊りまくるベイビーグルートにピントを合わせていくオープニングから最高すぎる。戦うのと同時進行でそれぞれのメンバーがちゃんと(?)親業してるのも良い。心がとろける。
自分にとっての家族を見つけていくというストーリーラインもドンピシャ大ヒットでした。好きでしかない。
7. IT/イット
"I'm not afraid of you!"
「あんたなんか怖くない!」
公開日:11/3
鑑賞日:9/17(先行上映@映画秘宝まつり)
こんな青春時代1ミリも過ごしたことないけど「なつかしー!」と言いたくなってしまう不思議さ。「現実の恐怖に対峙するためにあるのがホラー」というスティーヴン・キングの言葉が身に沁みる映画になっていました。そして何よりも笑える要素がたくさんあるのが最高です。
続編が非常に楽しみで非常に不安な映画でもあります。頼むから面白くあってくれ...頼むから面白くあってくれ...頼むから...
6. ベイビー・ドライバー
"Oh, you mean Jason."
「あ〜、ジェイソンのことか。」
公開日:8/19
鑑賞日:8/21
現実逃避に使われがちな「音楽」を、同じく現実逃避に使われがちな「映画」の中で「逃走劇」に絡めて展開させるというコンセプトだけでもう楽しい。ベイビーが音楽に合わせて一人でノリノリに動き出すところで一瞬にしてハートをぶち抜かれました。今思うとあの衝撃はガーディアンズオブギャラクシー2のオープニングを見たときの衝撃と通じるところがあるかもしれないです。この宇宙上の生き物は二種類に分けられる...踊るやつらと踊らないやつらだ!ベイビーは踊るやつだ!
ベイビー・ドライバーの話をするとどうしても思い出して嫌な気持ちになってしまうのがケヴィン・スペイシーの件ですね。ジョン・バーンサルも「(ベイビー・ドライバー撮影現場で)ケヴィン・スペイシーはいじめっ子のようだった」発言してますし、これまでと同じ気持ちでこの映画を見ることが難しくなってしまったのが残念でならないです。クリストファープラマーで再撮影してくれ...
ケヴィンスペイシーのことを切り離して考えるのは難しいですが、彼以外にもそれはもう大勢の人間が関わっている映画であることは事実なので、サウンドトラックと映像を完璧にシンクロさせて撮影したという技術の高さや、超大作映画(しかも音楽映画)でありながらろう者の俳優を起用し映画内に自然に溶け込ませた点など、高く評価されるべき点はこれからも変わらず評価され続けることを願ってます。
5. ムーンライト
"Why'd you call me?"
「どうして電話したんだ?」
公開日:3/31
鑑賞日:4/7
静かな激しい感情を美しい美しい映像でまとめ上げた素晴らしい作品でした。この作品がアカデミー賞を取ったという事実だけで「世の中捨てたもんじゃないな」と少しは思うことができますし、この『ムーンライト』や『キャロル』を皮切りに、セクシュアル・マイノリティがメインキャラクターでありながらも主役やその愛する人が死ぬことなく、希望のある終わり方をする映画がこれからもっと増えていくといいなと期待しています。
ポスターなどに使われている上の写真が、少年時代・青年時代・大人時代のそれぞれのシャロンがコラージュされたものだということを映画鑑賞後に初めて知り、「なんて考え抜かれてるんだ...」と二度目の感動を味わうと共に、言われるまでそれに全く気づかなかった自分の目の節穴っぷりに落胆したりもしました。なんてぼんやりものを見てるんだ...
4. LOGAN/ローガン
"Nature made me a freak. Man made me a weapon. And God made it last too long."
「自然は俺を化け物にし、人間は俺を兵器にした。そして神はそれを長く続けさせすぎた。」
公開日:6/1
鑑賞日:6/2
あ゛り゛か゛と゛う゛!!!!!!
今までお世話になりました!!!!こんな最高傑作で締めてくれて本当に本当に本当にありがとうございます!!!!お疲れ様でした!!!!愛してる!!!!!!
3. モアナと伝説の海
"I am Moana!"
「私はモアナ!」
公開日:3/10
鑑賞日:3/10
「自分は何者なのか(Who I am)」という一貫したテーマが良かったですし、アナと雪の女王やララランドよりもがっつりミュージカルしていたのでかなり驚きました。最高にカッコいい悪役ソングも愉快でウザい相棒の歌もありつつ、クライマックスの展開まで歌で魅せてくれるなんて...言うことないです...最高ッス。
「お母さんもお父さんも島の人たちも島のことも心から愛してるけど世界はもっと広いはずだし私はそれをこの目で見たい!」というポジティブな動機でモアナが冒険に旅立つのも良かったですし、無理に恋愛要素を入れなかったのも良かったですし、サイドキックをディズニーお得意の「可愛らしくて従順な小動物」から外してきたのも良かったです。そして歌がいちいち良すぎる。カットされた曲すら良すぎる。
2. メッセージ
"Memory is a strange thing."
「記憶というのは奇妙なものだ。」
公開日:5/19
鑑賞日:6/18
なんっにも内容知らずに観に行ったので、話の展開に涙を流しながらただただ圧倒されました。圧巻。頭が良くて腕のいい人たちにかかれば、SFというジャンルの中の一つの作品内でここまで世界平和の話ができ、言語の話ができ、人生の話ができ、愛の話ができてしまうんですね。映画の構成にも、それが示すテーマの深さにも息を呑みました。
従来の型にはまらない宇宙人や宇宙船の姿が見られたのも嬉しかったです。地球の重力が適用されない宇宙船内なんてワクワクが止まりませんよ!私もジャンプして乗り込みたい!言語学者になればいいんか?!??
1. ゴッホ 最期の手紙
"You want to know so much about his death, but what do you know of his life?"
「あなたは彼の死について知りたくてたまらないようだけど、彼の人生の何を知ってるっていうの?」
公開日:11/3
鑑賞日:12/20
映画館で泣き、家で感想を漁りながら映画の内容を思い返しては泣き、監督のインタビューを読んでは泣き、挿入歌を聴いては泣いてきたんですが、今でもちょっとこの映画に思いを馳せるだけで泣いてしまうくらい個人的に心に刺さってしまったのでこの作品が1位です。「心に刺さった」というよりは「心を粉々に砕かれた上にすり潰されてそのまま海に流された」という方が近いかもしれません。フィンセント・ファン・ゴッホという偉人の話がこんなにパーソナルな感情を湧き起こすとは思っていなかったので完全に不意を突かれました。
アーティストたちが描いた6万枚以上の油絵を用いアニメーションに仕上げたこの映画。私は元々ゴッホの絵が好きだったにも関わらず、「ゴッホのあのタッチの絵を一時間以上観続けるのはさすがにキツくない...?」とか「技術的に凄すぎる映画って内容は二の次になりがちだよね...」とか冷笑的で愚かな考えに囚われていたことでなかなか観に行けずにいたんですが、その気持ちのままスルーせず観に行って本当に良かったです。まず前者の不安要素は「回想シーンをモノクロのリアルな絵で描く」ことで解消されていましたし、技術の凄さもさることながらそのサスペンス調の物語にも強い求心力があり、私はぐいぐい引き込まれていきました。
この映画自体がゴッホの作品とゴッホの人生に対するラブレターになっているので、「あなたのことも、あなたの作品も愛する人が今ではこれだけいますよ」と自分が郵便配達人になってゴッホ本人につい届けに行きたくなってしまうんですが、それはもう誰にもできないことなんですよね。現代の人間がどれだけゴッホに賞賛を贈ったとしてもそれはゴッホまで届かないし、そんな栄光を知る由もなく彼はこの世を去ってしまったんだなと思うとなんとも感傷的な気持ちになります。
映画の内容だけでいっぱいいっぱいになっているところに追い打ちをかけてきたのが、Lianne La Havasの歌う挿入歌"Starry Starry Night"でした。こんなに美しくて優しくて悲しい曲がこの世にあったんですね...
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特に心臓をすり潰されたところの歌詞を置いておきます。
(1:00~)
Now I understand what you tried to say to me
今なら分かる あなたが何を語りかけようとしていたのか
How you suffered for your sanity
正気であることであなたがどれほど苦しんだか
(2:39~)
For they could not love you
彼らはあなたを愛することができなかった
But still your love was true
それでもあなたの愛は本物だった
And when no hope was left in sight
そして何の希望も見えなくなったとき
On that starry, starry night
あの星明かりの夜のどこにも
You took your life, as lovers often do
あなたは自分の命を絶った 愛する人がよくするように
But I could have told you, Vincent
だけど私ならあなたに伝えられた ヴィンセント
This world was never meant for one
この世界はふさわしくなかったの
As beautiful as you
あなたのような美しい人には
ドン・マクリーンの歌うオリジナル版"Vincent (Starry, Starry Night)"はこちら。歌詞付きです。
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映画自体は万人受けするものではないかもしれませんが、鬱などのメンタルイルネスに苦しんだ/苦しんでいる方や、そういう人が身近にいる/いた方、お金にならない芸術を生涯の仕事に選んだ方やその家族なんかには特に深く突き刺さってくる作品なのではないかと思います。
1月から上映が始まる劇場もあるようなので興味のある方は。
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最後までお付き合いくださりありがとうございました。年が変わっても特に大きな変化があるわけもなく同じような世界が続いていくとは思いますが、皆様よいお年を。